「過去に病気をしても審査OK」な保険の意外な落とし穴
「数年前に、契約前の持病があっても加入できて、悪化や再発による入院や手術も保障してくれる引受基準緩和型医療保険が登場しました。ある商品は発売初日から加入者が数百件もあったといい、いまでは保険会社各社の主力商品となりそうな勢いです」
そう話すのは経済ジャーナリストの荻原博子さん。通常の医療保険は審査の段階で細かい告知事項が10項目ほどあり、過去2カ月以内の医師による診察の有無や過去5年以内の入院・手術歴、過去2年以内の健康診断・人間ドックの指摘事項など、かなり詳細な健康状態が問われ、基準をクリアできないと加入できないが……。
「引受基準緩和型医療保険は告知事項が、3つから多くて5つ。最近3カ月以内に医師から入院・手術・放射線治療を勧められたことの有無と治療方法の説明を受けたことがあるか、過去2年以内に入院・手術・放射線治療を受けたことがあるか、などというように条件も緩和されています。高血圧の人、糖尿病、高脂血症などと診断されていても入院・手術の予定がなく、告知事項をすべてクリアしていれば加入することができます」(荻原さん)
では、引受基準緩和型医療保険にデメリットはあるのか?荻原さんは注意すべき点を次のように解説する。
「まず、加入から一定期間は入院給付金や手術給付金などが受け取れなかったり、減額されるケースがあります。また、年齢や商品、保険会社によっても異なりますが、通常の医療保険よりも、保険料がかなり割高なものも。たとえばある会社の引受基準緩和型医療保険と、同社の通常の医療保険を比べてみると同じ保障内容の保険で入院給付金が日額5千円(50歳・終身払い)なら通常の医療保険の月額保険料は3,200円に対して、引受基準緩和型は4,400円になります。年にすると14,400円も差が出てきます」
保険は、加入者が払った保険料から保険金を払うことで成り立っている。病気を抱えている人が多ければ、通常よりも保険金の支払いが多くなるぶん、高めの保険料を徴収してカバーしなくてはならないのだ。
「この通常の医療保険との差額は、年齢が上がるにつれ縮まっていきます。60歳くらいになると健康な人と、既往症のある人とで、その後入院・手術をするリスクはそう変わらなくなってくるというデータもあります。一見すると、病気があっても加入できるというのはトクな気もしますが、そのぶん、通常の保険についていない条件があったり保険料が高かったりするということは覚悟しましょう。それでも保険に入っておきたいのであれば、まず通常の保険の審査を受けてみて、だめならこの保険を検討してもいいかもしれません」(荻原さん)