ワイン、焼酎、自然派ワインに続くお酒ブームとなっているのが、“新世代日本酒”。それも、女性や若者のあいだで大ブーム中だ。国内では、星付きのフレンチで料理と日本酒のマリアージュを打ち出す店が相次いでいる。
世界の食文化の都でもいま、日本酒がアツい。パリではミシュランの星を持つ一流レストランで飲まれ、ニューヨークの高級レストランやホテルのラウンジにも日本酒が並び、ワインに負けず劣らず食通たちの舌をうならせている。
いったい、日本酒に何が起こったのか?この疑問を解明するべく、日本酒をグラスワインに引けを取らないほどそろえる自然派ワインバー「ミャンカー」の店主、倉井哲哉さんにブームの理由を聞いてみた。
「ワインバーとしてオープンした当初から、日本酒とワインが一緒にあるお店をやりたかったんです。ただ、構想していた10年前はまだその両方を置く店のイメージが湧かなくて……。今こうして日本酒も置くようになったのは、醸造酒同士である日本酒とワインの相性のよさに気づいたのがきっかけです」
ワインソムリエでもある倉井さん。あるとき、レストランで食事とワインを楽しんでいると、食後酒として甘めの日本酒が出てきた。ワインの流れの中で、まったく違和感を感じなかったことに驚いたという。同じころ、“エポックメーキングな”日本酒に出合う。
「新政酒造の『亜麻猫』です。昔ながらの濃くて強い日本酒とはまったく違い“こんな日本酒もあるんだ!”と、かなり衝撃を受けましたね。強い酸味があって、それでいてとってもフルーティなんです。複数の白ワインをグラスに並べ、その中に『亜麻猫』を混ぜておいたら、白ワインだと思って飲んでしまいますよ。ラベルがかわいいところもワイン的ですね」
『亜麻猫』は、日本酒造りで通常使う黄麹ではなく、白麹を用いて造られている。これがワインのような酸味と、フルーティなうま味を生む。
「『亜麻猫』以降、フルーティで酸味のある、ある意味ワインに近い日本酒が増えました。6〜7年前からブームの自然派ワインと同じく、原料を大事にして添加物を極力控えて造る新世代日本酒が、ワイン愛好家を中心に広がりました」
通常の日本酒は火入れ(加熱処理)を2回行うが、加熱処理によってフルーティさは損なわれがちに。また、原酒はアルコール度数が20度ぐらいあるため、従来はそれを15〜16度にするために加水するのが原則だ。
「しかし、新世代の日本酒は、火入れをしない、もしくは火入れをしてもフルーティさを残すものが多い。さらに原酒でありながら、アルコール度数を14度前後に抑える工夫をしている蔵も。ワイン好きの人には非常に飲みやすいですし、若い人にも支持されるんでしょうね」