「春の日差しを受けると、寒さで縮こまっていた体がほどけて活動的になりますよね。薬膳の考えでも、春は体が伸びやかに開くとき。デトックスの季節でもあります」
そう話すのは、司会やコメンテーターとして活躍するほかバラエティ番組にも出演、’16年に国際薬膳師の資格を取得し薬膳講座の講師も務める、麻木久仁子さん(56)。
「デトックスと聞くと、ただ体内の汚いものを排出するイメージですが、薬膳ではちょっと違っていて、滞っていた気の巡りを回復させることをさします。冬の間というのは、体が縮こまり、気も滞りますが、同時に新しい気、つまり春に向けてエネルギーの芽のようなものを育ててもいるんですね」
そんな春の体を整えるなら、「春菊がいいですよ」と麻木さんは言う。
「春にいただきたい食材は、伸びやかな力をくれる芽のもの、気の巡りをよくしてくれるもの、春の“邪気”から守ってくれるもの。春菊はといえば、いわば縁の下の力持ちで、これらの食材のパワーを吸収して、スムーズにデトックスするための土台をつくってくれます。もちろん春菊自体も、気の巡りをつかさどる“肝”の働きを助ける力を持っています」
冬を越え、味も香りも強くなる春先の春菊。「香りも味も濃いこの季節の春菊だからこそ、調理法を選ばず、料理のアイデアが広がって楽しい!」と語る麻木さんが、おすすめレシピを教えてくれた。
【春菊と桜エビのかき揚げ】
<材料>2人分
春菊…1/4束
桜エビ…20g
A(小麦粉…60g、水…75ml、マヨネーズ…大さじ1)
小麦粉…小さじ2
揚げ油…適量
塩、黒こしょう…各少々
<作り方>
1)春菊は5cm長さに切ってボウルに入れ、桜エビを加え、小麦粉をまぶしてよく混ぜる。混ぜ合わせたAを加え、さっくりと混ぜて4等分する。
2)揚げ油を180度に熱し、1をひとつずつ入れる。バラけないよう表面が少しかたくなるまで菜箸で押さえながら、色よく揚げる。器に盛り、塩、黒こしょうを添える。
「エビは、気の巡りをつかさどる“肝”を養う食材。さらに、自家発電のように自ら体を温める力をつけてくれるので、まだまだ寒いこの季節にはぴったり。春菊と一緒に揚げるとカリッ、サクッの食感も楽しいですよ」(麻木さん・以下同)
【春菊とレバーの炒めもの】
<材料>2人分
春菊…1/2束
鶏レバー…200g
にんじん…30g
牛乳…大さじ3
A(しょうゆ…大さじ1、しょうが(すりおろし)…小さじ1)
B(しょうゆ…小さじ1、酒…大さじ1、みりん…大さじ1)
小麦粉…適量
サラダ油…大さじ3
塩…ひとつまみ
粗びき黒こしょう…少々
<作り方>
1)鶏レバーはひと口大に切り、牛乳に15分ほどひたす。水けを拭きとってAをもみ込み、再び水けを拭いて小麦粉を薄くまぶす。
2)春菊は5cm長さに切り、茎と葉に分ける。にんじんは5cm長さのせん切りにする。
3)フライパンにサラダ油大さじ2を中火で熱し、1を両面さっと焼き、とり出す。
4)3のフライパンをさっと拭いてサラダ油大さじ1を足し、春菊の茎とにんじんを炒める。しんなりしたら春菊の葉を加え、塩を加えてひと混ぜする。3のレバーを戻し入れ、Bを加えて強火にし、水けがなくなるまで炒めて火を通す。器に盛り、黒こしょうを振る。
「肝の働きを助ける春菊に、肝を強くするレバーの組み合わせは、この季節、最強のメニューともいえます。牛乳に漬けるひと手間と、火を通しすぎないのが、レバーをクリーミーにおいしく仕上げるコツです」
【春菊とタコのごはん】
<材料>2人分
春菊…1/2束
米…2合
タコ…150g
しょうが(すりおろし)…小さじ2
A(しょうゆ、酒、みりん…各大さじ2)
<作り方>
1)米はといでザルに上げておく。春菊は水けがついたままラップに包み、電子レンジ(600W)で50秒加熱し、水けをよく絞り、5mmほどの粗みじんに切る。タコは1cm角に切る。
2)炊飯器に米を入れてAを加え、分量の水を足す。タコとしょうがをのせて普通に炊き、炊き上がったら春菊を混ぜる。
「たこは、肝を強くし、血をつくる食材。心も体も伸びやかに過ごしたい春には“気血”の巡りが大切なのです。春菊は炊き上がりにさっと混ぜるのがポイント。湯気の中からひときわ立ちのぼる香りを楽しんで」