“おひとりさま”は、元気なうちは、自由気ままにシングルライフを満喫できるが、問題は年をとってからだ。万が一、病気で倒れて病院に入院したとき、「誰が身元保証人になってくれるのだろうか」「死んだ後は誰が手続きをしてくれるのか」――と、将来への不安は尽きない。
そんなニーズに応えるために、最近、安否確認や身元保証、死後の手続きなどの代行をパッケージで提供する民間サービスが広がっているが、『ひとり終活』(小学館新書)の著者で、シニア生活文化研究所所長の小谷みどりさんはこう注意を促す。
「身元保証や死後の手続きを代行する高齢者のサポートサービスは、費用が想定以上にかかったり、預託金を流用されるといったトラブルに巻き込まれたりすることもあるので注意が必要です。たとえば、ある団体に預託金として約100万円支払ったが、事務経費と身元保証費のみに充てられ、葬儀や遺品の整理など、『死後の手続き』は別料金がかかることを知り、解約したいと思っても返戻金がほとんどなく、『損をした』という声をよく聞きます」(小谷さん・以下同)
頼れる親族が身近にいない場合は、まずは自治体で実施しているサービスを、目的別に個別に申し込んで使うと、費用も安く済むという。
そこで高齢になり必要になってくるサポートの中から、「日常生活支援」について小谷さんに解説してもらった。
■日常生活を支援するサービスはまず自治体で探す
年を重ねて足腰が弱ってくると、家事もおっくうになりがちだ。生活するうえで不便なことが出てきたら、まずは自治体に1つはある「地域包括支援センター」で介護保険のサービスを使うことができないか、相談してみよう。
「要介護認定を受けられるほど深刻ではない場合でも、多くの自治体には1人暮らしの高齢者向けに、家事の手助けをしてくれる生活援助員やヘルパーを派遣してくれる独自の制度があります。自己負担は1回数百円程度。週に1度、1回につき60分までなどと利用の制限はありますが便利です。こうした制度があるかどうかも、『地域包括支援センター』で教えてくれます」
毎日買い物に行くのが大変、という人は、近くの「シルバー人材センター」で家事支援のサービスがあるか聞いてみよう。買い物を代行してくれる。調理ができなくなっても、1食500円程度でお弁当を届ける際、安否確認を兼ねた配食サービスを実施している自治体も多い。
居室で倒れたときにブザーを押すと警備員が駆けつけてくれるなど「万が一」のときのために備えておく「緊急通報システム」「見守り機器」も、自治体で貸与してくれる。
また、自治体にある社会福祉協議会(社協)の「日常生活自立支援事業」を知っておくと「預金通帳の置き場所がわからなくなった」「金銭の管理ができなくなった」というときに役に立つ。1カ月に1~2回程度、定期的に生活支援員や相談員が訪問して、公共料金の支払いや現金の引き出し、福祉サービス利用の手続きを代行してくれる。
利用料は地域によって異なるが、訪問は1回あたり1,200円程度。別料金で通帳や年金証書なども預かってくれる。このサービスを利用するためには、自分の意思で支援の内容を決めて契約する必要がある。
身近にある制度の情報収集をして“人生のしまい方”の準備をしておこう。