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駅の階段を上ると息切れがする、家の中でつまずいたり、すべったりすることが増えた、疲れやすくなったので外に出るのがおっくうだ……。これらは筋力が低下しているシグナルだという。

 

「筋力が低下すると、以前はできていたことが困難になり、疲れやすい体になってきます。筋肉が落ちると聞くと、痩せ細った状態の人をイメージするかもしれませんが、太っていても筋肉が落ちている人がいます。これを『サルコペニア肥満』と呼び、放っておくととても危険な状態です。男性に比べ、筋肉量の少ない女性こそ、いっそう注意が必要です」

 

そう警鐘を鳴らすのは、筑波大学大学院人間総合科学研究科の久野譜也教授。筋肉の量は20代がピークで、30代からは年齢とともに減少し、80代になると20代の約6割まで低下してしまう。

 

「もっとも筋肉が落ちやすいのは足腰です。足腰の筋肉が衰えると、歩行機能が低下してきます。階段を上るのがつらくなったり、つまずきやすくなったりして日常生活にも支障が出てきます。このように、加齢に伴う筋肉量の低下を『サルコペニア』といいます。筋肉が衰えると、脂肪が燃焼しにくくなり、肥満が進行して、生活習慣病のリスクが高まるといった負のスパイラルに陥ってしまうのです」(久野教授・以下同)

 

弱い筋力で重い体重を支えられなくなると、ひざの痛みが起こり、思うように動けなくなる。カロリーが消費されずにますます太る。サルコペニア肥満の状態にあると、高血圧の発症リスクが男性で1.7倍、女性で2.3倍ほど標準体型の人に比べて高くなり、糖尿病になるリスクはじつに男性で23倍、女性で19倍にも跳ね上がるという。このほか、高脂血症や心臓病、脳卒中などにもかかりやすくなる。筋肉量が低下しているので骨折や転倒により寝たきりになる恐れもあり、サルコペニア肥満はメタボよりも恐ろしいリスクをはらんでいるのだ。

 

サルコペニア肥満かどうか、見た目や体重では判断しにくいが、(1)体重に占める筋肉の割合「筋肉率」が、男性で27.3%未満、女性で22%未満、かつ(2)体格指数(BMI=体重を身長の2乗で割った数値)が25以上の人があてはまるという。筋肉率は市販の体組成計で測定できるが、日常生活のなかでセルフチェックもできる。

 

【サルコペニア肥満チェックリスト】

□横断歩道が青信号中に渡りきれない
□歩くスピードが遅くなった
□ペットボトルのキャップが開けられない
□少しの段差で足がつっかかる
□手すりにつかまらないと階段が上れない
□階段を少し上っただけで息切れする
□なんだか疲れやすくなった
□外に出るのがおっくうになった
□片足立ちで靴下がはけない

 

多くの項目にあてはまる人は、ダイエットよりも筋力をつけることが先決で、足腰中心の筋トレを始めたいところだが、いきなり激しい運動をするのはNG! 20〜30分間のウオーキングから始めよう。

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