「体のどこかがいつも激しく痛む」「肘のあたりが急に腫れた」など、ある日突然襲い掛かる体の不調に悩む40〜50代の女性は多い。
「特にけがをしたというわけではないのに、体のどこかに不調が出てくることには、女性ホルモン『エストロゲン』の低下が関係していると考えられます。女性は45歳を過ぎたころから女性ホルモンの分泌が減少し始め閉経に向かい、のぼせ・ほてりなどのホットフラッシュ、めまいや動悸といった症状が出ることがあります。このほか、頭痛、肩こり、腰や背中、関節の痛みが生じることも。直接の原因は不明とされる疾患には、更年期をむかえる40〜50代の女性に顕著に見られるものがあるのです」
そう指摘するのは、婦人科専門医で浜松町ハマサイトクリニック婦人科の吉形玲美先生。朝早く起きて朝食やお弁当を作って、仕事に出かけたり、家事をしたり、日本の女性の1日は忙しく、睡眠時間は年々短くなる傾向にある。体の変化と向き合う余裕がなく、無理を重ねてしまい、ある日体調を崩してしまう人もいる。
女性が罹りやすい「原因不明の主な病気」には次のものがある。
【線維筋痛症】
体のあちこちの広い範囲に、針で刺したような痛みが3カ月以上の長期にわたって起こる。体のこわばりとともに激しい疲労感、不眠、頭痛などの症状を伴うが、原因はわからない。中高年の女性に多い。
【関節リウマチ】
関節が炎症を起こし、軟骨や骨が破壊されて肘やひざなどに激しい痛みを伴う。手足の関節で起こりやすく、左右の関節で同時に症状が生じやすいことも特徴。患者の割合は男女比1:4で女性に多く見られる。
【変形性関節症】
骨密度の低下などから、手指の関節の骨を覆う軟骨がすり減って、突然指に痛みや変形が現れる。指先から第一関節の軟骨がすり減るものを〈へバーデン結節〉、第二関節は〈ブシャール結節〉、3番目の関節は〈母指CM関節症〉という。
【骨粗しょう症】
女性ホルモンの分泌が少なくなるとともに、骨を作る量も低下する。骨がスカスカになって、腰や背中に痛みが生じてくる。閉経してから20年ぐらいたつとちょっとつまずいただけでも骨折しやすくなる。
【肺MAC症】
結核菌の親戚のようなMAC菌という細菌が肺に感染して起こる呼吸器系の病気。微熱、せき、血たんが続く。日本の浴室はMAC菌が増殖しやすい環境にあるので、罹患者の多くは家庭での風呂そうじをしている人、40歳以上の女性、ストレス体質、痩せ形といった体質や傾向が見られたという。
これら原因不明の厄介な病気を遠ざけるために、特に40代以降の女性はふだんから自分の体と向き合うことを習慣づけるべき、と吉形先生は話す。
「更年期障害の程度を確認する更年期指数(SMI)というチェックリストでスコアが高い人、高くなくてもつらい症状がある人は婦人科や更年期外来を受診しましょう」
【SMIチェック表】
□顔がほてる 強10、中6、弱3、無0
□汗をかきやすい 強10、中6、弱3、無0
□腰や手足が冷えやすい 強14、中9、弱5、無0
□息切れ、動悸がする 強12、中8、弱4、無0
□寝つきが悪い、または眠りが浅い 強14、中9、弱5、無0
□怒りやすく、すぐイライラする 強12、中8、弱4、無0
□くよくよしたり、憂うつになることがある 強7、中5、弱3、無0
□頭痛、めまい、吐き気がよくある 強7、中5、弱3、無0
□疲れやすい 強7、中4、弱2、無0
□肩こり、腰痛、手足の痛みがある 強7、中5、弱3、無0
SMIの評価・0〜25点=異常なし。26〜50点=食事・運動に気を付け、注意を。51〜65点=更年期・閉経外来を受診しましょう。66〜80点=長期間にわたる計画的な治療が必要。81〜100点=各科の精密検査にもとづいた長期の計画的な治療が必要。
体内バランスが変化する時期にきちんと生活リズムを整えておくと、更年期以降も元気で過ごせることにつながるという。
「女性自身」2020年3月17日号 掲載