コロナ不安で、「稼がなければ」と思う主婦が増える一方、「稼ぎすぎると、夫の扶養から外れて損をする」と耳にすることもーー。
「“扶養”を気にするより、働けるならば、どんどん稼いだほうがいいと思います」
こう話すのはファイナンシャル・プランナーの加藤梨里さんだ。そもそも、妻にとっての扶養とはなんなのか?
「妻が働く場合に“扶養”が指す意味は大きく2つ。“税の扶養”と“社会保険の扶養”です」
1つ目の税の扶養は、配偶者控除・配偶者特別控除を指し、夫の所得税や住民税の税額を減らすことができるものだ。
「所得税は、所得額に応じて税額が決まるのですが、控除によってその“所得”を減らすことができるのです。控除額は夫・妻の所得によって変わりますが、夫の合計所得が900万円以下で妻がパート勤務(給与所得者)の場合、70歳未満の妻の年収が103万円以下なら配偶者控除として、夫の所得から38万円を控除できます」
妻の年収が103万円超から150万円までの場合は、配偶者控除と同額の“配偶者特別控除”を受けることができる。150万円を超えると控除額が段階的に減少し、201万6,000円になると控除が受けられなくなる。これがそれぞれ150万円の壁、201万円の壁といわれているものだ。
「税の扶養を気にするとしたら、意識すべきは103万円の壁ではなく150万円の壁ということです」
ちなみに個人事業主の場合、税の扶養範囲になる年収計算がパートと異なる。
また、103万円を超えると“税の扶養”とは別に、自分の収入に対して、所得税を支払う必要が出てくる。だが、課税されるのは103万円を超えた分だけなので、それほど高額な税にはならない。
税の扶養や所得税の支払いよりも世帯の収入に大きく影響するのが、年金・健康保険料の免除を指す“社会保険の扶養”だ。
「夫が会社員や公務員の場合、妻の年収が130万円未満(妻の勤務状況によっては106万円)であれば、夫の勤務先の社会保険の扶養に入ることができます。これは、健康保険料を自分で払わなくても夫の勤務先から保険証が発行されるということです。同時に国民年金の第3号被保険者となり年金保険料も免除されます」
つまり年収130万円以上になると、勤務状況にかかわらず、夫の扶養から外れて自分で社会保険料を払う必要が生じるのだ。
「パートの場合、健康保険は妻の勤め先の健康保険に加入し、年金は勤務先で厚生年金に加入するというケースがほとんどでしょう。個人事業主の場合、またパートでも規模の小さい個人事務所など社会保険のない事業所に勤務する場合は、健康保険は居住地域の国民健康保険に、年金は第1号被保険者として国民年金に加入することになります」
社会保険料は月々の支払い金額が収入の上昇分を上回って“損をしてしまう”ケースがある。これが「106万円の壁」「130万円の壁」といわれているものだ。確かに、年に130万円稼いだ場合、社会保険料が年間約20万円の負担増となり、年収129万円のときに比べ、手取り額が年に19万円近く下がってしまう。やはり、130万円以下に収入を抑えたほうがよいのだろうか?
「そんなことはありません。一定額以上稼げば手取りも増えますし、厚生年金に加入すれば老後の年金受給額の増加にもつながります」
最後に加藤さんが、今後の主婦の働き方について助言をくれた。
「おおむね152万円以上稼げば目先の収入が増え、家計にゆとりが生じますし、もし夫がリストラされても、自分で社会保険料を払っていれば、夫を自分の扶養に入れることができます。自分で働いて稼げる状態であるということが、この先は何よりのリスクヘッジになるのです」
この春からは、主婦もバリバリ働くのがよさそうだ!
「女性自身」2021年3月9日号 掲載