「今は人生100年時代。50歳といえば、人生のほんの折り返し地点です。心身ともに健康で過ごすことができる「健康寿命」を延ばすためには、食生活の見直しがとても大切です」
こう話すのは、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部の濱裕宣先生だ。濱先生は同部の赤石定典先生と共に、栄養を効率的に取るための活動を行っている。
「特に女性は、50歳前後からホルモンバランスの乱れで更年期障害に悩まされたり、なんらかの生活習慣病が診断されるなど、体の変化を感じやすくなります。そのため、更年期に入っても若いころと同じ食事を続けていては、体に無理が生じてしまいます。中高年には中高年に合った栄養の取り方があり、それによって体調をコントロールすることも可能となるのです」(濱先生)
50代以降の女性に特に気をつけてほしいのは、「血管」「筋肉」「骨」「肌」「腸内環境」の5つの健康だという。
「動脈硬化が悪化して引き起こされる心筋梗塞や脳梗塞は、50代から増加します。動脈硬化とは、本来ゴムのように柔らかい血管が硬くなったり、血管壁の内側にコレステロールがたまることで血液の流れが悪い状態を指します。動脈硬化を防ぐためにも、血管をしなやかにし、血流をサラサラにする食材を取るようにしましょう」
ほかにも50代から加速する体の変化に、筋肉量や骨密度の減少、腸内環境の悪化、肌の老化などが挙げられるが、いずれも食事を見直すことで、予防・改善が望めるという。
「筋肉を維持するためには良質なタンパク質、骨密度を保つにはカルシウムなどのミネラルとビタミンD、腸内環境を整えるには食物繊維、肌の老化にはビタミン類など、それぞれ必要な特有の栄養素があります」(濱先生)