「なかなか治らない、便秘や下痢などおなかの“不腸”。それだけでもつらいのに、長引く不腸はさまざまな病気の引き金になってしまいます」
そう語るのは『3週間でお腹が整うまいにち腸日記』(池田書店)の著者で、消化器専門医の江田証先生。
ヨーグルトや納豆などの「発酵食品」、ニンニクや玉ねぎに豊富な「オリゴ糖」。腸によいとされるこれらの整腸食品だが、とることで、かえっておなかが張ったり、便秘や下痢になったりと、おなかの不調が悪化することがあるという。
「最近の研究では、整腸食品をとってもおなかの調子が改善されない原因に『FODMAP』と呼ばれる糖質が関わっていることが明らかになりました。FODMAPとは小腸では吸収できないオリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオール(糖アルコール)の4つの発酵性糖質。小腸で吸収されにくいため、とりすぎると腸の動きを悪くして、腹痛や下痢、便秘を引き起こします」(江田先生・以下同)
以下のような項目に当てはまる人は、FODMAPがお腹の不調の原因になっている可能性がある。
□ お米を控えてパンを食べているが、おなかが張っている
□ パンやパスタを食べたあとに下痢や、おなかが張るように感じる
□ 牛乳やチーズなどの乳製品をとると、おなかが痛くなる
□ 毎朝ヨーグルトを食べているのに下痢や便秘が治らない
□ ごぼう、豆類などの食物繊維をとると、ガスや下痢、便秘がひどくなる
□ 納豆、キムチなどの発酵食品をとるとかえっておなかが張る
□ 玉ねぎやニンニクを食べると、下痢や腹痛を引き起こす
□ きのこ類を食べると、おなかが痛くなる
□ りんごや桃、柿を食べるとおなかに不快感を抱く
□ キシリトールガムをかむと、おなかがゆるくなる
■FODMAPによって小腸がガスでパンパンに…
「また、SIBOの人では、小腸で急速にガスを大量発生させることも……」
SIBOとは、大腸に生息する腸内細菌が小腸で異常繁殖した状態(小腸内細菌増殖症)のことをいう。加齢による腸の機能低下、小腸から大腸への入口のゆるみなどにより、大腸から小腸に細菌が流入。小腸内で、FODMAPをエサに細菌がガスを発生させ、おなかの張りや痛み、下痢や便秘などの症状を引き起こしてしまう。栄養の吸収が阻害され、ビタミンの欠乏症を起こしたり、腸から有害物質や未消化の食べ物が血管に漏れ出すリーキーガット症候群を招くことも……。
過敏性腸症候群やSIBOなどでおなかが弱い人は、FODMAPを含む食品を避けることで、不調が改善できることもあるという。
一見腸によさそうなFODMAP食品の例としては、納豆、小麦、ヨーグルト、りんご、ごぼう、はちみつ、シリアル、玉ねぎなどがある。
「腸活ブームで、腸によいとされる情報が飛び交っていますが、実は“誰にでも効く”腸活はありません。指紋と同じように腸内環境は一人一人異なるため、不調の原因や改善方法も人それぞれ。だからこそ、自分の腸に合った習慣を見つけることが重要なのです」