「長引くコロナ禍で運動不足になり、筋力の衰えが目立つ女性が増えています。うちのクリニックにも“骨盤底筋”の衰えによる“尿もれ”や“頻尿”のお悩みを相談にいらっしゃる患者さんが増えました」
そう警鐘を鳴らすのは、女性医療クリニックLUNAグループの理事長で、泌尿器科医の関口由紀先生(57)だ。
「閉経後の女性って、子育ても終わって生理の煩わしさからも解放されて、本来ならいちばん、やりたいことをできる時期。でも一方で、女性ホルモンの減少によって、体が変わってしまう時期でもある。その変わり目に、うまく対応して、第二の人生を謳歌してほしいんです」
そんな思いから、関口先生は「50歳未満はお断り」を掲げ、女性ホルモンの低下によって生じる女性特有のさまざまな悩みに対応するクリニック「LUNAネクストステージ」を運営している。
「閉経後の女性によくある尿もれや、頻尿、膣萎縮による陰部の不快感といった悩みは、〈命にかかわるわけではない〉として、軽視されてきました。しかし、’14年に“GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)”と名前が付いて以来、医師たちの受け止めも変わってきました。閉経後の女性のQOL(生活の質)を改善する大事な治療として、相談できる医療機関も増えています」
「高齢社会になれば、更年期に泌尿器のトラブルに悩む女性が増えるはず」と考え、泌尿器科専門医を志した関口先生。大学医学部を卒業後、勤務医として泌尿器科の経験を積んだ。さらなる知識を得るため、大学院に入学。出産や子育てをしながら、海外でも学び、女性特有の病気を治療する“女性医療”の道を究めていった。
’05年、満を持して女性医療クリニックLUNAを開業。
’18年に世代別の女性の体の悩みに対応できるように、50代以上の女性向けの「LUNAネクストステージ」も創設した。内科や美容皮膚科、形成外科のほか、骨盤底筋トレーニングなどを受けられるスタジオも備えている。
「うちに来て、やっと尿もれなど女性特有の悩みを打ち明けられたという患者さんは多いです」
関口先生が、数多くの更年期以降の女性を診ていて気になるのが、GSMの原因のひとつとなっている骨盤底筋の衰えだ。
「骨盤底は、骨盤の底にあり子宮や膣・膀胱などを支えているプレートです。骨盤底筋はこのプレートを構成する筋肉のこと。骨盤底筋は妊娠や出産でもダメージを受けるのですが、40代を過ぎて女性ホルモンが減少してくると、徐々に皮下組織のコラーゲンが減って弾力がなくなっていく。閉経を迎えると、これが加速して“尿もれ” “頻尿” “膀胱炎の再発” “陰部の違和感” “性交痛”などの要因になるのです」
関口先生は、「すでに尿もれなどの症状がある方でも、あきらめる必要はない」と、こう続ける。
「骨盤底筋は、いくつになっても鍛えることで弾力を取り戻せます。すると骨盤底の血流が改善して、GSMの症状が改善するんです。“人生百年”時代。せめて90歳くらいまでは、イキイキと人生を楽しみたいじゃないですか」