食材がもつ栄養パワーを余すことなく引き出すためには、食べる“量”と同時に“タイミング”が重要だと専門家は語る。朝・昼・夜の時間帯別に賢く食べて、悩める不調を解消しよう!
「年齢が上がるにつれて、食事の栄養バランスについて気にする人が増えてきます。しかし、『何を食べるか』は意識していても『何をいつ食べるか』まで気を配っている人は、まだまだ少ないように感じます」
こう話すのは、時間を考慮した食・栄養の健康科学のスペシャリストで、早稲田大学先進理工学研究科教授の柴田重信先生。
先日、柴田先生の研究チームは、《朝にタンパク質を多く取ることが筋肉の増加に効果的である》という実験結果を発表。アメリカの科学雑誌『セル・リポーツ』にも掲載され注目を集めている。
実験の結果、同じ量のタンパク質を摂取する場合、1日の中で朝に多く取ると、より筋肉の増大につながることがわかったそうだ。
柴田先生は、食事の時間と栄養効果の関係について、次のように語る。
「女性にとって1日に必要な摂取熱量は約1,500キロカロリーとされていますが、同じ人が同じものを食べても、1日の中の『いつ食べたか』によって体重が増加したり、血圧が高くなる度合に差があることがわかっています。つまり、同じ食材でも、食べる時間によって得られる栄養効果は異なるのです。このように、『何をいつ食べるか』という視点で食材の栄養効果を研究した学問を『時間栄養学』と呼びます」(柴田先生・以下同)
いったいなぜ、食べる時間によって栄養効果が変わってくるのだろうか?
「その要因は『体内時計』にあります。人の体は、体内時計のおかげで、意識しなくても日中は体と心が活動状態に、夜間は休息状態に切り替わるようにできています。しかし、人間の体内時計のサイクルは地球の自転周期である約24時間よりも15~30分ほど長くなるようにできています。そのため放っておくと、体内時計はどんどんズレてしまうのです。体内時計がズレると、昼間頭がボーっとしたり、食欲が出なかったり、免疫力が低下したりとさまざまな問題を引き起こします」
体内時計のズレを、脳は主に太陽の光によって、脳より下の体の部分は主に食事によって調整しているという。
「特に大切なのが朝食です。放置しておけば体内時計はどんどん遅れていくものを、人間の体は朝食を取る時間を基準にして調整しているのです。また、体温や血圧、ホルモン分泌などは体内時計に合わせた約24時間の周期で変化しているため、その周期に合わせた食事を取ることが大切です」
この「いつ食べるか」の重要性を、「納豆」を例にして解説してもらった。
「納豆は大豆製品であり、良質なタンパク質を豊富に含んでいます。そのため、朝に食べると、タンパク質の効果により、筋肉を増加させて筋力の減少を防ぎます」