「慢性的な腰の痛みに対する治療法がいまだに確立されていない理由は、医学が見逃している“落とし穴”にあるのではないかと考えています」
こう話すのは、「カリスマドSトレーナー」として約75万人の悩みに向き合ってきたストレッチ専門スタジオ代表の兼子ただしさん。
「もちろん骨に異常があったり筋肉が炎症・挫傷していたりと、原因が明らかな場合の腰痛は、整形外科での治療が必要です。ところが、慢性的に腰痛を抱える人の大多数は、医学的にも原因がはっきりとわからないケースがほとんどなんです」
では、医学的な原因を見つけることができない腰痛はどのように解決をすればよいのか。腰の痛みを緩和させる方法といえば湿布を貼ったり、マッサージに行ったりすることをイメージする人も多いはず。それが正しい対処法かはさておき、その場しのぎの対策をして放置してしまっているのではないだろうか。
■慢性的な腰痛の原因は「腹壁攣縮」にある
「私自身も腰痛に悩んでいましたが、ある日、痛みの真反対側のおなかが硬くなっているということに気が付いたんです。さらに、慢性腰痛に悩んでいる人100人を対象に調査を行ったところ、98人が私と同様に、腰側とおなか側で同じ位置に痛みがあることがわかりました」
兼子さんがこの症状の研究を重ねた結果、これはおなかにある内臓を守るための壁が縮こまって硬くなってしまう「腹壁攣縮」という状態であると気づいた。おなかが硬いまま放置してしまうと、おなかまわりにある神経がなんらかの組織の圧迫を受けてしまう。そして、おなかまわりの神経とつながっている腰側の神経までも連動して圧迫されてしまい、腰痛が引き起こされるのだという。
さらに神経が圧迫される原因はもう一つあるそう。
「肋骨周辺に張り巡らされた肋間神経が何らかの要因で緊張し、縮んで短くなると、うまく“神経が滑らない”、すなわちずれた状態になってしまいます。ここで紹介する1分ストレッチは、こうして起こった神経のずれを正しい位置に戻すために効果的です」
女性の場合、子宮の収縮が原因で神経が圧迫されて腰痛が発生することもあるというが、そうした腰痛も次の“おなか押すだけストレッチ”を行うことで改善されるとか。
【ストレッチの準備】まずは“押す場所”を探そう!
ストレッチをする場所は、腰痛が生じている部分の真反対にあるおなか部分。体を動かして、腰のどこが痛いか確認してみよう。腰の右が痛むならおなかも右側、腰の両側が痛むならおなかも両側ストレッチを。「痛みの真反対」に痛みを感じるか、まずはチェック。
【肋間神経のずれを正す1分ストレッチのやり方】
(1)筋肉をほぐす
おなかの硬くなっているところに両手の指をあて、口から息を吐きながら、5秒間押し続けよう。両手の人さし指、中指、薬指の2本か3本で押すとしっかり押せる。おなかの筋肉がよくほぐれると神経をずらしやすくなるが、押すときは背中を反りすぎないように。また、イタ気持ちいいくらいの強さで押すこと。過剰な力で押さないように。
(2)手を離す
おなかがほぐれたところで神経をずらす準備をする。押していた両手をおなかから離し、肩の力を抜いてリラックス。離した手は肩が上に上がらない程度におへその横あたりで静止。
(3)顔を上に向ける
神経をずらす準備の続き。両手はおへその横あたりで開いたまま、顔を上に向ける。顔を上げてしっかりと上を向くことで神経をずらしやすくなる。腰を反らしたり猫背にならないように。
(4)神経をずらす
腰の痛みの原因となっていた神経のずれを元に戻す。顔を上げたまま、軽く膝を曲げながら、5秒かけて鼻からゆっくりと息を吸う。膝は軽く曲げる程度でOK。息を吸いながら膝を曲げることでより神経をずらしやすくなる。息を吸う瞬間に縮んでいた神経が伸び、元の位置に戻る。腰を反らさず神経が足のほうへ伸びていくイメージで行おう。
血流不全が原因で生じる更年期特有の慢性的な疲れにも、このストレッチは効果的。硬くなったおなかの筋肉をほぐすことで血流が改善し、血液中の疲労物質が体外に排出されやすくなると、兼子さんは語る。
「これからは自分で健康を勝ち取る時代。そのためにも、長年の腰痛の悩みにしっかり向き合うことが大切です。健康的な時間を維持していくためにも、私の考案した簡単おなかストレッチ法を、1日3回、3週間継続することを目安に、ぜひ活用してみてください」
あなたも“おなかを押すだけ”でつらい腰痛とおさらばしよう。