【前編】「定年後はそば店に」が失敗パターン 専門家教える高齢者の就職から続く
「超高齢社会の日本は、年金財政が悪化の一途をたどっています。60歳定年で65歳まで再雇用するシステムの会社は多いのですが、『65歳以降も働き続けたい、働き続けなければいけない』と考える人は多いのではないでしょうか」
こう語るのは、キャリア・アドバイザーの上田信一郎さん。人生100年時代、65歳以降の夫婦2人で暮らす歳月が「30年ある」ことを前提に生活設計する必要があるという。
そこで本誌は専門家と働いている人への取材をもとに、65歳以降でも働き続けやすく、高齢でも採用されやすい仕事を紹介する。
■常に人手不足で求人は多い
<医療施設、介護施設のスタッフ>
「非常に求人の多い仕事。補助的な仕事であれば、未経験、無資格でも求人があります」(シニアジョブの中島康恵社長)。時給は最低賃金+α程度から、スキルに応じて昇給していく。
■人より高い家事スキルが必須
<家事代行>
「以前は『家政婦』とも呼ばれていた職種。未経験でも対応できますが、なにより高い家事スキルが求められます」(中島社長)。求人数は多くなく、採用される難度は高い。
■“やりがい”は高いが、責任も重い
<保育施設、教育施設のスタッフ>
「人材不足のため、教員免許や保育士資格がなくても補助的な仕事を任せられるケースが増えています」(中島社長)。やりがいはあるが、子どもの保育、教育に携わる責任も伴う。実際に保育園スタッフと働いているA子さん(63)はこう語る。「長男出産後は専業主婦でしたが、50歳ごろに『また仕事したい』と思い、資格がなくても働ける公立保育園スタッフを始めました。時間外保育担当で週5日、15~18時半の勤務、月収は8万円超で、賞与ありです。子どもの顔を見られて、自由時間が多いのがメリット。ただ、体力的にちょっとだけキツくなってきました(笑)」
■人気の職種で採用の倍率は高い
<オフィスの事務や受付>
「女性の就業が多く年齢も問わない人気の仕事ですが、その割に求人が少なく、つねに採用の倍率が高い傾向です」(中島社長)。スキルより人間性などの要素が求められることも。
■就職しやすいが基本的に立ち仕事
<小売店の店員>
「業種によって諸条件が異なりますが、求人は比較的あります」(中島社長)。基本的には立ち仕事が中心で体力も必要。今後、人件費削減で求人が減少していく可能性も。
■電話の頻度、内容は会社によってまちまち
<コールセンターのオペレーター>
「さまざまな業種、企業のニーズがあり、その分、採用条件、業務内容も違いが多くあります」(中島社長)。正社員のほか、契約社員やアルバイト、派遣社員や業務委託というケースもある。給与体系や給与額もさまざま。実際に働いている官公庁の電話オペレーター 豊島道子さん(68)はこう語る。「会社員だった主人は定年退職、私は友人と経営していた会社を2020年に売却して無職に。複数の人材派遣会社に登録して『明日から来られますか?』と電話をもらったのが、いまの官公庁の仕事です。一時は1日8時間勤務していたこともありましたが、『これでは続かない』と思い1日4時間×週4日に。月12万円ほどの収入です」
■シニアの採用が急増中
<工場などの作業員(軽作業に限る)>
「特殊な資格や経験、スキルを必要としない仕事もあり、60代以上の勤務も珍しくなくなっています。立ち仕事もあったりするため一定の体力が必要です」(中島社長)。70代でも延長雇用があるケースも増えており「狙い目」という。実際に、クッキーの袋詰め作業に従事している斎藤厚子さん(66)はこう語る。「50歳手前のころ、自宅近くのクッキー製造工場を通りかかり、求人広告を目にしました。パートで1日4時間×週3日、時給850円から始めて、徐々に昇給して現在は1,100円に。焼き上がったクッキーをパッケージに詰める作業で、重いものを持つこともあるのがキツいところですが、好きなお菓子の知識を学べるメリットも」