「相続する土地・家屋の20~30%は、望まない相続であるといわれています。使い道がないのに、維持費や固定資産税などを負担しなければならない“負動産”だからです。なかには、相続したのに登記しないケースも。こうした“所有者不明”となっている土地を合わせると九州の面積を超えていて、この状態が続けば、いずれ北海道の面積も超えるといわれています。その対策のために、来年、再来年と、新しい制度が始まります。知らなければ、過料を科されることもあるので、注意が必要です」
こう話すのは司法書士法人リーガル・フェイスの田中均弥さんだ。資産価値が低く、利用する予定もない“負動産”が心の重しになっている人は多い。
「買い手も借り手も見つからない空き家は、傷むのが早いので、定期的に空気を入れ替え、メンテナンスしなければなりません。しかし、相続した空き家と自宅が遠く離れている場合、難しいでしょう」
■空き家でのトラブルは相続人の責任に
放置されたままの空き家は、放火されたり、誰かが住みつき犯罪の温床になったり、倒壊して近隣の家に迷惑をかけるリスクがある。
「『空家等対策特別措置法』によって、倒壊の恐れなど危険な建物は自治体の判断で取り壊すことができますが、基本的にトラブルがあれば、その責任は土地・建物の所有者が負うことになります」(田中さん、以下同)
こうした“負動産”にも、固定資産税がかかる。タダでもいいので自治体等に寄付したいと思う人は多いはずだ。
「ところが寄付というのは、互いの意思が必要で、どちらか一方の希望だけでは成立しない。所有者が『あげる』といっても、公園に利用できるなど、公共事業に有効活用できる土地でなければ、自治体は寄付を受け付けません」
そんな人の助けになるのが、2023年4月27日から施行される「相続土地国庫帰属法」だ。
「相続で取得した土地は、一定の条件を満たしていれば、どんなに資産価値が低くても国が引き取ってくれるようになります」
しかし、どんな土地でも引き取ってくれるわけではない。
「まずは更地であること。空き家があれば、解体しなければなりません。一般的な一軒家(30~40坪程度)であれば、解体費用は100万円から200万円くらいでしょう」
土地が崖地だったり、所有権に争いがある場合もダメ。
「国に引き取ってもらう土地の10年分の管理費を払うのも条件です。まだはっきりと決まっているわけではありませんが、市街地の約200平方mの宅地であれば80万円、山林や畑、原野などなら20万円ほどが目安となりそうです」
まったく買い手のつかない田舎の実家などに困った場合は、解体費用含め120万~180万円ほどでこうした悩みとおさらばすることができる。それを安いと感じるか、高いと感じるかは、“負動産”をどの程度負担に感じているかによるだろう。
「施行以前に相続した不動産などが対象になるのか、まだ明確な規定はされていないので、今後の指針が注目されています」