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「ひきこもり」というと、学生をはじめ若い人たちの話だと思われがちであるが、中高年の男性の間で「ひきこもり」の人が増えている――。そんな実態が、内閣府が3月31日に公表した「こども・若者の意識と生活に関する調査」から浮かび上がった。

 

全国の10歳から69歳の3万人を対象にアンケートを実施し、その回答に基づいて、15〜64歳のひきこもり状態の人は全国に146万人いると推計された。

 

「ひきこもりの人は『自分はひきこもりの状態です』と自らは言いません。深刻な状態の人ほどアンケートなどに答えたがらないので、そうした立場の人も反映されると、146万人の倍の数になってもけっしておかしくないでしょう」

 

そう語るのは、ジャーナリストで「ひきこもり」の当事者や家族などで作る「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の池上正樹副理事長。厚生労働省の定義などを参考にすると、「ひきこもり」とは「自宅にひきこもって学校や仕事に行かず、家族以外との親密な対人関係がない状態が6カ月以上続いている状態」を指す。

 

今回の調査では「ふだんは家にいるが、近所のコンビニや自分の趣味に関する用事のときだけ外出する」という人も含まれている。

 

「家族会の調査でも、ひきこもる人の8割以上は外に出ています。ただし、コンビニやスーパーへの買い物や、図書館や散歩に出かけても人との交流を避ける、そもそも人が怖いので人とかかわらないようにしている、などのように他人に心を閉ざしている状態なのです」(池上副理事長)

 

今回の調査で40〜69歳の人の結果に注目してみると、既婚者が多く、「配偶者あり」と答えた人が53.5%と半数を超えている。調査の質問項目の一つ、「現在の外出状況になった理由」の回答でもっとも多かったのは「退職」(44.5%)だった。

 

「家族がいても、家の中で邪魔者扱いされて居場所を失う中高年の姿が目に浮かびます。会社生活がすべてだった人は、退職後の喪失感が大きいため『新たな一歩』が踏み出せないケースが多いのです。会社員時代に時間がなくてできなかった趣味や習い事を通じて人との交流をもってほしいところですが、コロナ禍や物価高騰もあって、お金がかけられないという背景が影響している面もあるのでしょう」(池上副理事長)

 

ひきこもりを看過できないのは、病気をはじめとしたトラブルにつながるリスクがあるためだ。

 

「自分がひきこもりだと気がつかないうちに、うつなどの心の病いにつながることが多く、アルコール依存、家庭内暴力などに発展することも考えられます。なるべく早い段階で発見し、相談や治療にあたることが大切です」

 

そう指摘するのは、九州大学大学院の加藤隆弘准教授(精神病態医学)。加藤准教授は、同大学病院でひきこもり専門の外来を担当している。

 

「私たちのひきこもり専門外来でも、患者さんの約7割に精神疾患がありました。ひきこもりの人は『自分はひきこもりではない』と、SOSを発信できずに頑張りすぎてしまい、心の病いにかかってしまうことも。心の病いを治療したことで、ひきこもり状態から抜け出した人もいます」(加藤准教授)

 

早期発見のために、九州大学大学院医学研究院では、直近1カ月間のひきこもり度を自分自身で評価できる「ひきこもり度評価ツール(HQ-25M)」を開発した。

 

「あくまでもひとつの目安ですが、40点を超えるとひきこもりのリスクは高いといえます。40点よりも下だから大丈夫、というわけではなく、たとえば20点以上であれば『予備群』として、どの部分に点数が多かったのか着目して、本人や家族が対策を講じるようにしてもらいたいです」(加藤准教授)

 

ひきこもりの相談先には、都道府県、県庁所在都市、指定都市等の「ひきこもり地域支援センター」や市区町村のひきこもり担当窓口、KHJ全国ひきこもり家族会連合会のような家族会などがある。

 

前出の池上副理事長は「ひきこもりは遠い世界の問題ではなく、自分や家族も直面しうる事柄だと受け止めてほしい」と話す。私の夫に限って……という過信は禁物。不安があれば自分たちで背負いこみすぎず、専門機関へ相談することが大切だ。

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