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「日本人はたしかに長寿ですが、どれだけ健康寿命を長くできるかが課題です。私は最近『90歳の壁』を意識するようになり、それを乗り越えるための習慣を実践中です」

 

こう話す医師の鎌田實先生。現在74歳の鎌田先生は、70代でけがをしない体作りに励み、80代では毎日歩き続けることで、90歳を元気な体で迎えるのが目標だという。特に心がけているのが「脈活」だ。

 

「日本人の死因の上位には心筋梗塞や脳梗塞といった血管系の疾患がありますが、実に4人に1人が動脈硬化を起因とする血管系疾患で死亡している計算です。血管系疾患の予防のためにも、血管を健康に保つための『脈活』はとても大切です」(鎌田先生、以下同)

 

脈活のキーワードの一つが、NO(一酸化窒素)という体内で産生される物質だという。

 

「NOは、’98年にノーベル医学・生理学賞を受賞した3人の化学者によって、血管内皮細胞から分泌されると、血管を拡張させて血圧を下げる働きがあることが発見された物質です。たとえば、手にグッと力を入れて握りこぶしを作り、パッと開くとき、血管内からNOが放出されます。加圧トレーニングもこの理論を活用したもので、NOを出すことで血流を促進し、血管を若返らせることができるのです」

 

この「グーパー体操」をすき間時間に実践することも、脈活になると鎌田先生は話す。 このほかにどんなことに気をつけて日々の生活を送ると血管の若返りにつながるのか、鎌田先生が行っている脈活を紹介してもらった。

 

「まず、起きてすぐに朝日を浴びてください。朝日には私たちの体内時計を整えてくれる働きがあり、このとき分泌される『セロトニン』が16時間後に睡眠ホルモンの『メラトニン』に変化します。朝日を浴びながら腹式呼吸をしたり、軽い運動をすると、目覚めもスッキリしますし、おなかがすいてスムーズに朝食を取ることができます」

 

忙しい朝も朝食は欠かさないようにしたい。

 

「年齢を重ねてからも、毎食きちんと食べることは体作りのために不可欠です。朝食は昼食後の血糖値の急上昇を防ぐ役割もあります。卵や青魚、大豆製品などのタンパク質、そして野菜を意識的に取りましょう」

 

野菜をたっぷり食べていると、野菜に含まれるカリウムによって血中のナトリウムが排出され、血圧を安定させる効果が得られる。

 

「日本人に1日に必要な野菜の摂取量の目安は350gですが、実際の平均摂取量は300gほど。約50g足りていません。野菜には細胞の老化を防ぐ抗酸化成分や、便通を促す食物繊維も含まれます。ぜひ目標値をクリアしましょう」

 

これからの季節、日中の気温が上がってくると、室内ではエアコンが使われ、屋外と屋内の温度差が大きくなってくる。特に女性は体が冷えやすくなりがちなので、体の保温を心がけたい。

 

「室内にいるときは腹巻きをするなど、体の芯を冷やさないように注意が必要。体が冷えると、体の隅々まで血液が届きません」

 

おやつタイムには、シナモンジンジャーティーで体内を温めよう。紅茶にシナモンパウダーとチューブタイプのしょうがを加えるだけ。抗酸化作用や気分をリラックスさせる効果も期待できる。日中に散歩などで体を動かしておくと、副交感神経が優位になり、睡眠の質を高めることにもつながるそうだ。

 

夕食では、根菜類を多く取ろう。睡眠中の胃腸への負担を軽減するためにも、可能な限り早い時間にすませることを習慣にしたい。そして、入浴はシャワーですませずに、ぬるめのお湯につかるとNOを産生させることができる。就寝前は「むくみ取りポーズ」で血流を促し、6時間以上の良質な睡眠を確保すること。

 

「就寝直後の3時間は“若返り”の、起床前の3時間は“痩身”のホルモンが分泌されるゴールデンタイム。この時間帯にしっかり眠ることも大切です」

 

健康長寿をかなえるために、「脈活」を日常に取り入れていこう。

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