認知症患者に便秘が多いという研究データから、便秘が認知症につながるという新たな知見が発表された。便秘により腸内が炎症を起こすと、脳の炎症、つまりは認知症のリスクが高まるという。
“中年期以降の排便の回数と便の硬さが認知症リスクと関係する”
国立がん研究センターを中心に行われている多目的コホート研究(あるグループを追跡して病気の発生などの健康状態を調べる研究)からの研究結果が6月29日、海外のジャーナル、『Public Health』誌オンライン版に掲載された。
これは’00年と’03年に、秋田県、長野県、茨城県、沖縄県、高知県の5つの保健所管内の50~79歳の住民男女約4万2千人から得られたアンケートの追跡調査から、排便習慣と認知症の関連を調べた研究である。
調査対象者のうち、1千889人の男性、2千685人の女性が要介護認定情報より認知症との診断を受けていることを確認し、今回の研究はそのデータを解析したものだ。
それによると、男女ともに便の頻度が少ない人ほど、また、便が硬い人ほど認知症のリスクが高いことがわかった。
令和元年の国民生活基礎調査によると、日本人女性の約44%が便秘に悩まされており、さらに65歳以上の場合、約72%の女性が便秘の悩みを抱えているという。
この数字を見ると、今回の結果は衝撃的ともいえる。
この研究の責任者で、国立がん研究センターがん対策研究所コホート研究部部長の澤田典絵さんは、今回の研究の背景について、次のように話す。
「以前から認知症の患者さんに便秘症状が多いことは知られていましたが、排便習慣が将来の認知症(特にアルツハイマー型認知症)のリスクと関係しているのかといった研究はありませんでした。今回の研究は、その点に着目したものです」
その結果がグラフである。
「『排便の回数が1日に1回の人』を1(基準)とした場合、頻度が少なくなるほど認知症のリスクが高くなっており、女性の場合、週3回未満の人のリスクは1.29倍になります。
便の硬さについても解析をしたところ、『便の硬さが普通』を1とすると、便が硬くなるほど認知症のリスクが上がり、『特に硬い』では1.84倍となることがわかりました」(澤田さん、以下同)
日ごろのお通じの悩みが、まさか認知症のリスクと関係があるとは恐ろしい限りだ。