リバースモーゲージの利用が増えています。リバースモーゲージとは、自宅を担保にお金を借りるシニア向けの融資です。返済は契約者の死後に自宅を売却して行うので、存命中は負担が軽く、自宅に住み続けられることなどから注目されています。
日本経済新聞によると、リバースモーゲージの累計融資額は’23年6月末で2千億円を超え、’16年からの約7年で倍増しています。
また、最近は住宅ローンの借り換えに利用する人も多いようです。
’23年4~6月の住宅金融支援機構のリバースモーゲージ申込み者のうち22・3%が借り換え目的だったといいます。
初めて家を買う年齢が上昇傾向で、70代まで返済が続くことも珍しくありません。年金からのローン返済は苦しいと思いますが、リバースモーゲージは仕組みがややこしく、危険な側面もあります。
まずはメリットから見ていきましょう。人気の大きな理由は、毎月の負担を抑えられることです。
住宅ローンに残債があっても、リバースモーゲージに借り換えた時点で住宅ローンは終わります。リバースモーゲージは先述のとおり元本の返済は死後に先送りして、存命中は利息のみ払います。住宅ローンだと「返済があと10年間、月約8万円」から、リバースモーゲージだと「利息の月約2万円を死ぬまで」になるイメージです。
また、高齢者への融資は厳しいのに、リバースモーゲージならOKという銀行も多い。さらに、住み慣れた自宅に住み続けられるメリットもあります。子どもは自分の家を持っていることも多く、親の死後に実家を売却しても問題ないと考える人が多いようです。
いっぽうデメリットは、第一に利用できる人が少ないこと。融資対象は地の利のよい都市圏の戸建てが中心で、地方やマンションは対象外の銀行が多いです。
第二は、リバースモーゲージの融資額は不動産評価額の50~60%程度に抑えられることです。相場価格1億円の物件でも、返済を数十年先まで待ってもらうため、融資額は5千万円程度になります。この時点で売却したら1億円で売れる可能性はあるでしょう。
第三は、金利は3~4%で変動金利です。最近は長期金利が10年ぶりの高水準ですが、金利上昇が続くと返済額が増える可能性も。
第四は、物件の価値が下がった場合、融資が減額されることも。借入期間が短縮され、早期に自宅を売却して返済する、つまり、死ぬまで住めない危険性もあります。
第五は長生きリスクです。想定より長生きした場合、融資額が尽き、住む場所を失うことも。
リバースモーゲージは「自宅」という財産を活用し老後資金を調達するひとつの方法です。ですが、自宅に死ぬまで住める、返済が楽になるだけで決断するのは危険です。「自宅を売却したら?」「介護施設に入所するときはどうする?」なども考え、検討してください。