『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』などの作者としておなじみの漫画家、鳥山明さんが3月1日、68歳で亡くなった。死因は“急性硬膜下血腫”。
急性硬膜下血腫とは、脳を覆っている硬膜と脳表との間に起きる急性出血のこと。さがみ生協病院内科部長の牛山元美さんが原因について解説する。
「一般的には、転倒や転落、交通事故などによって強く頭を打ちつけた場合、その衝撃で硬膜と脳表の間の血管が切れて出血が起きることで発症します」
衝撃を受けた直後、あるいは少し時間を置いてから、激しい頭痛や意識障害、嘔吐、麻痺などの症状が現れる。
「こうした症状が出た場合、緊急手術で頭部の血腫を取り除かないと命に危険が及びます」(牛山さん)
ただし、頭部にそれほど強い衝撃を受けなくても次のような人は要注意。
「過去に脳梗塞や心筋梗塞を起こした人、狭心症など心疾患をお持ちの人、さらには、脊柱管狭窄症などの治療で整形外科に通っている人などはリスクが高まります。血管がもろくなっているうえに、“血液をサラサラ”にする薬を服用している場合が多いので、つまずいた拍子に軽く頭を打ったくらいでも、脳の血管が切れて血腫ができることもあるのです」(牛山さん)
つまり、血液サラサラの薬を服用している場合は、ちょっとした“つまずき”による頭部の打撲でも、急性硬膜下血腫になる可能性があるということなのだ。
■自宅内転倒が多い高齢者が見落としやすい盲点は?
日本理学療法士協会の副会長で、理学療法士の佐々木嘉光さんは、「自宅内にも転倒のリスクが潜んでいます」と話し、警鐘を鳴らす。
「年齢とともに“視覚”や“バランス感覚”“筋力”などが落ちてくるので、ちょっとしたモノにつまずきやすくなるからです」
東京消防庁の統計(令和元年)では、住居内で高齢者の転倒事故が発生する場所として多いのは、1位:居室・寝室、2位:玄関・勝手口、3位:廊下・縁側・通路、4位:トイレ・洗面所、5位:台所・ダイニングと続く。
「大前提として、室内のどこであっても〈室内や足元を明るくする〉〈動線上にモノを置かない〉〈滑りやすいマットはできるだけ敷かない〉が基本。さらに、足のサイズに合っていないスリッパも事故の原因になります」(佐々木さん)
こうしたポイントを押さえたうえで、自宅内で転倒しやすい場所と回避する方法を見ていこう。