14日、気象庁が東北地方の梅雨入りを発表した。これで、梅雨のない北海道を除き、すべての地方で梅雨入りが確認されたこととなる。この時季特有の“梅雨ダル”症状に既に悩まされている人も多いはずだ。
「梅雨の時季の不調は頭痛・むくみ・めまい・胃腸の不調・イライラなど多岐にわたりますが、中医学では、こうした梅雨ダルの症状を『水毒』と呼びます。
気圧の変化が三半規管に影響することで自律神経が乱れる、高温多湿で汗が蒸発しにくく、体温調節が難しくなるなどで、水毒の原因である『水滞(すいたい)』や『痰湿(しったん)』が生じやすくなるのです」
こう話すのは漢方薬剤師の大久保愛さん。
「『水毒』の原因となる『痰湿』とは、体にとって余分な水分や老廃物のこと。重く、粘り気があり、上昇しにくい特徴があり、痰湿がたまると『頭が重い』『思考がぼんやりする』などの症状が出やすくなります」(大久保さん、以下同)
ただでさえ不調になりやすい梅雨だが、もともと水分代謝に関わる「脾」(=消化器)や「腎」(=泌尿、生殖器、生命力)が弱い人は注意が必要だという。
「こういった人は、気圧の変化によってめまい・吐き気・むくみ・頭痛などが出やすくなります。漢方では、弱まった『脾』や『腎』のケアをすることで、状態が改善されると考えられています」
特に、体力の低下を急に感じるようになる更年期世代にとって、腎を補うことは積極的に行いたい。
そんな水毒のケアに役立つのが、われわれの生活に密接な関係をもつ、野菜や果物の“種”なのだそう。
「漢方ではさまざまな食材の種を『仁』とよび、古来、漢方薬の原料としても使われてきました。
利水(体の余分な水分を取り除く)、健脾(胃腸の機能を整える)、潤腸通便(便通を促す)、補腎(エイジングケア・生命エネルギーを養う)、補陰(体や肺などを潤す)などの作用があり、水毒の症状改善に効果があるといわれています」
実際、種にはポリフェノール、リグナン、フラボノイドなどの抗酸化物質、ビタミン類に、マグネシウムや亜鉛、カリウムなどのミネラル、食物繊維、オメガ3脂肪酸などが含まれている。血圧降下作用、血糖値コントロールなどの、さまざまな健康効果をもたらす可能性も示唆されているのだとか。
■捨てずにとっておいた種は、しっかり天日干しを
そこで大久保さんが提案するのが、それらの種を使った“種茶”だ。普通なら捨ててしまう種をとっておいて、乾燥させて、炒って、煎じて飲むのだ。
「煎じることで、成分が抽出されます。漢方としてよく使われる種には、松の実・びわの種・桃の種・黒ごまなどがありますが、今回は日常的に手に入れやすく、かつ水毒の症状におすすめの種茶を紹介します」
すいか、アボカド、ひまわり、かぼちゃ、とうもろこしと、どれも手軽に手に入る食材ばかりだ。とうもろこしは、種ではないが、普通は捨ててしまう「ひげ」を利用したレシピだ。甘味もあっておいしく飲めるため、ぜひ一緒に試してほしい。
「作り方のポイントは、しっかり乾燥させ、フライパンなどで乾煎りをすることです。
その理由は、安全に飲むため。さらに、栄養と香りを引き出しておいしく飲むためです」
種の内側には水分や油分が含まれている。種の中の油が酸化した状態で煮出すと、風味が悪くなるだけでなく、胃に負担をかける可能性もある。だから、種茶を作る前にしっかりと乾燥させ、炒ることが大切だ。
また、その過程で、種の細胞が壊れるため、ポリフェノールや香り成分を引き出しやすくなるという利点もある。
「乾煎りをすることで、種に香ばしさが出て、おいしさが増します」
