自身のSNSで、洞不全症候群で心臓にペースメーカーを入れたことを報告した美川憲一(写真:本誌写真部) 画像を見る

「皆様へ この度私事で恐縮ですが、最近めまい等があり検査しましたら、洞不全症候群(どうふぜんしょうこうぐん)と解りました」

 

13日、自身のインスタグラムを更新、こうつづったのは、歌手の美川憲一さん(79)。同投稿で美川さんはさらに、

 

「9月11日に、ペースメーカーの取り付け手術が無事に終わり、現在入院しております」

 

と報告している。無事の回復を願うばかりだが、美川さんが罹患したこの「洞不全症候群」とは、いったいどんな病気なのだろうか。

 

■心拍数が下がることでめまいなどの症状が

 

「筋肉の塊である心臓は、洞結節という部位から出る電気の刺激で規則的に動いています。その洞結節の機能が弱まると心拍数が異常に下がります。結果、体の動きに見合う血流量を送り出せなくなって、めまいやふらつき、息切れや倦怠感などの症状が出るのが、洞不全症候群です」

 

こう語るのは、東京都杉並区にある「ニューハート・ワタナベ国際病院」の芝山納恵瑠医師(循環器内科)。

 

「軽度の場合、自覚症状がないという人もいますが、病気が進行すると、日常生活に支障をきたすようになります。歩行中も、ほかの人のペースについていけなくなったりすることが起こります」

 

動悸の症状が現れることもあるという。

 

「洞不全症候群のなかには『徐脈頻脈症候群』と呼ばれる病気があります。徐脈は脈がゆっくりになることですが、頻脈は逆に脈が異常に速くなる不整脈のことで、このとき、心臓がいつも以上にドキドキと脈打つような動悸の症状を覚えます。

 

そして、この頻脈が起こると、『これはよくない』と心臓が脈をゆっくりにする神経を働かせるのですが……。不整脈が収まり、脈が正常に戻っても、神経の働きだけが残ってしまうことがあり、その際、脳への血流が途絶えて、フッと意識が遠のいてしまうようなケースもあります」(芝山医師、以下同)

 

そう、洞不全症候群が重症化すると「ブラックアウト」とも呼ばれる失神状態に陥ってしまうこともあるのだ。

 

「突然、意識を失って転倒して大けがを負ったり、交通事故につながるような危険があります。そのため、治療前の患者は自動車や自転車の運転は絶対に控えなくてはなりません。また、ごくまれにではありますが、洞不全症候群は致命的な不整脈や心不全につながることもあります」

 

どういった人が罹患しやすいのだろうか。芝山医師は「洞不全症候群の原因として多いのは加齢」と話す。

 

「加齢に伴い、洞結節の組織の変性や繊維化が起こるといわれています。70歳以上になると10?20%の人に臨床的に問題となる徐脈が出現するという報告もあります。それ以外ですと、心筋梗塞、心筋症、心筋炎などの病気になった人が二次的に洞不全症候群に罹患しています」

 

日本不整脈心電学会によると、65歳以上では600人に1人が罹患しているといわれている。

 

そのほかに「薬剤性徐脈」というものもあるという。

 

「高血圧の薬の一つであるカルシウム拮抗薬、また、不整脈治療などに使われるベータ遮断薬を服用している人に現れる症状です。これらの薬は心臓の動きを抑制する働きがあるため、薬が効きすぎてしまうと洞不全症候群と同様の症状が出てしまうのです」

 

症状があるにもかかわらず、放っておくと突然の失神や、最悪の場合は致命的な心不全、いうなれば死にもつながりかねないという洞不全症候群。

 

この病気に有効な治療法はあるのだろうか。美川さんは、ペースメーカーを取り付ける手術を受けたことを公表していたが。

 

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