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10月上旬まで「10年に一度」とされるほどの記録的な高温の日が続いたと思いきや、10月22日には東京都で最低気温10.4度を記録。12月中旬並みの寒さに急降下した。

 

気象庁が発表した来年1月までの3か月予報によると、11月は全国的に平年より高い気温が続くが、12月以降は平年並みの気温に戻り、冬の訪れは急ピッチになるとされている。短い秋をへて、冬本番の寒さへと気温の変動が大きくなるにつれて、体調管理がいっそう難しくなってきている――。

 

「季節の変わり目は体にさまざまなトラブルが生じがちですが“ぎっくり腰”などの急性症状を訴える方も多いです。体にゆがみがあるところに、寒さの影響からくる筋肉の硬直や自律神経の乱れが重なり、起こりやすくなるのです」

 

そう語るのは「桃谷うすい整形外科」(大阪市天王寺区)の臼井俊方院長。最近は初診で1日あたり20~30人が来院するところ、その2割程度の人がぎっくり腰の症状を訴えるそうだ。ぎっくり腰は、腰の筋肉や関節、椎間板などに急に負荷がかかることで起こる炎症や損傷の総称で、診断名は「急性腰痛症」という。

 

「夏には脱水など、体内の水分が不足することで筋肉が硬くなり、伸縮性が失われます。そのためちょっとした動きでも負荷に耐えきれず損傷しやすくなってしまうため、ぎっくり腰を起こすケースが多く見られました。

 

冬に向けて気温が下がると、今度は“寒暖差”が腰にダメージを与えるので注意が必要です。私たちの体は、寒さを感じると自律神経の交感神経が優位になり、体温が外に逃げないよう血管を収縮させるため、血流が滞ります。この作用によって体の熱が臓器に集められる半面、手足などの末梢は冷えを感じやすくなります。

 

全身の血流が滞ると、筋肉に酸素や栄養素が十分に行き届かなくなるので、疲労物質や老廃物が蓄積して硬くなります。これが痛みやこわばりにつながるのです」(臼井院長、以下同)

 

激しい寒暖差は自律神経にもトラブルをきたす。体温調節のために交感神経と副交感神経の優位性が頻繁に切り替わることで体に大きな負担がかかり、「寒暖差疲労」という不調を引き起こす。その状態が続くと、筋肉の緊張が解けなくなるという。

 

前日の最高気温と、翌日の最低気温の差が10度以上ある朝が、もっとも注意が必要。

 

「ぎっくり腰というと、一般的に重い荷物を持ち上げたときなどに腰に激痛が走るイメージがありますが、今の季節は、寒い日の起床時が危険です。気温が低下する朝は、体が動いていないのでただでさえ筋肉が硬く、いきなり起き上がろうとするときに、ぎっくり腰を起こしたという患者さんを多く見かけます。

 

目が覚めたらいきなり体を動かそうとせず、ベッドに腰をかけて足をパタパタ動かしたり、足の指先を動かしたりするだけでも、血流が促されます。起き上がる前に、脚を動かすようにしましょう」

 

特に気をつけたいのが、女性ホルモンが減少する読者世代だ。更年期などで、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が減少すると、血流が滞りやすくなり、筋肉や関節の柔軟性低下につながる。そのため、腰椎への負担が増加することに。寒暖差ぎっくり腰にならないためには、朝起きて足先を動かすほかにも、日常生活でのセルフケアが欠かせない。

 

「ふだんから座る時間が長い人は、座る姿勢と時間に注意を払ったほうがいいでしょう。腰痛がない人でも30分に1回、腰痛がある人であれば15?20分に1回は立ち上がるようにしましょう。

 

また、座るときもイスに浅く腰かけて背もたれによりかかると、腰に負担がかかります。

 

深く腰かけて、お尻の骨、坐骨で座るイメージで、骨盤を立てることを意識して、背もたれには軽く寄りかかります。ひざは90度に曲げて、足の裏全体が床に着くようにイスの高さを調節しましょう。

 

正しい座り方を意識するだけでも、慢性的な腰痛の改善につながります」

 

猫背や反り腰など、悪い姿勢が習慣化していることも、ぎっくり腰のリスクになるので、座り方に加えて立ち姿勢にも気をつけたい。また、寒暖差ぎっくり腰にならないためには、腹筋と背筋を鍛えなければと考える人も多いだろうが、激しい筋トレをする必要はなく、ウオーキング程度でも十分という。

 

そして、日ごろからスキマ時間に「お尻をほぐしておくこと」が、寒暖差ぎっくり腰には有効だ。

 

「まず、左足を右ひざの上に乗せ、背すじを伸ばして座ります。背すじを伸ばしたまま、股関節からゆっくり上体を前に倒すと、尻や背中が伸びて、お尻の筋肉がほぐれます。反対の足も同様に行います」

 

座る時間が長い人や、立ち仕事が多い人は、お尻の筋肉が硬くなりがちなのだという。

 

「それにより腰痛が起き、寒暖差ぎっくり腰につながるケースもあります。ふだんから腰やお尻の筋肉をほぐすことを心がけると、予防に効果があります。

 

また、筋肉の緊張を和らげるためにも“温活”も心がけましょう。腹巻きは胃腸を温めるだけでなく、腰も温めます。体を冷やす食事は避け、お風呂でもしっかりと温まるようにしたいですね」

 

急降下する気温の変化に体が悲鳴をあげることのないよう、日々の生活シーンを見直しておこう。

 

画像ページ >【イラスト解説あり】カギは「お尻をほぐすこと」…ぎっくり腰の予防に効果的なセルフケア(他1枚)

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