新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出の機会が減った結果、パソコンやスマートフォンの使用時間が急激に増えたという人は多いだろう。そんな“スマホの使いすぎ”は、体にさまざまな負担をかけることになる。
ブルーライトが眼精疲労を招くことはよく知られていますが、じつは“肌の老化”の原因ともなるのです」
そう警鐘を鳴らすのは、日本医科大学名誉教授の太田成男先生だ。太田先生は、ブルーライトが私たちの体内で酸化ストレスを発生させることを自身の研究から導きだした。
「研究では、紫外線やブルーライトなど数種類の光をマウスの皮膚に当て、時間経過による活性酸素の発生率を調べました。活性酸素は皮膚細胞を酸化させ、シミやシワの原因となるものです。それまでも太陽から降り注ぐ紫外線が肌を酸化させることは明らかになっていましたが、実験によって、ブルーライトにも肌に活性酸素を発生させる作用があることがわかりました」(太田先生・以下同)
ヒトの皮膚にも同様の構造があるため、ブルーライトを浴びることは私たちの肌にトラブルをもたらす原因となるという。
ブルーライトは可視光線の中でも波長が短く、強いエネルギーを放つ。活性酸素を生む力は紫外線のほうが大きいものの、ブルーライトに8分間当たっていると、紫外線に4分間当たっているのと同程度の皮膚への影響が生じることになる。ブルーライトを発するスマホの画面を長時間にわたって見ていることは、強い日差しのもとにいるのと同様に、肌のシミやくすみの原因となるダメージを受けることになってしまうのだ。
1日に日光に当たっているのはせいぜい数十分、長い人でも1〜2時間というところだろう。いっぽう、ブルーライトを浴びる時間はそれよりはるかに長い。
「スマホの画面のほかにも、パソコンやテレビのLEDディスプレー、室内灯などからもブルーライトは発せられています。思いのほか、私たちの生活のさまざまなシーンにブルーライトが存在しているといってもけっして過言ではありません」
’18年に総務省が発表した統計によれば、50代の人が休日にテレビ視聴やインターネットを使用する時間はおよそ6時間にのぼる。すなわち、私たちは日常生活の中で、想像以上に肌トラブルの原因にさらされていることになる。例年より在宅時間が長くなっている今年は、そのリスクがいっそう高まっているのだ。
「夏場になると、肌を露出しないよう気をつけたり、クリームを塗って肌を保護したりと、紫外線による日焼け対策を心がける人はたくさんいます。しかし、同じように肌への負担をかけてしまうブルーライトに関して注意をしている人はまだまだ少ないのが現状です」
これから夏本番へと向かっていくなか、日焼けだけでなく“スマホ焼け”にもきちんとした対策が必要だ。気をつけたいポイントを太田先生に聞いた。
「なにより、ブルーライトを浴びる時間を減らすことが近道です。スマホやパソコンの使用は、1日3時間以内に抑えたいところです。仕事などでどうしても使わざるを得ないという場合でも、こまめに休憩をはさむなどして、ブルーライトを連続して浴びている時間を少しずつ減らすように努めてください。また、日中テレビをつけたままにしておくことは、その間ブルーライトが放出されっぱなしという状態になってしまいます。必要でなければテレビのスイッチはオフにしましょう」
さらに、スマホやパソコンのディスプレーにブルーライトカットのシートを貼る、画面の明暗を調節して、明るくしすぎないということも大切だ。網膜を保護するために、ブルーライトカットの機能を備えた眼鏡を使うことも太田先生は推奨する。
「若いうちは、ブルーライトからダメージを受けたとしても肌に十分な回復力があるのですが、中高年になるとその回復力が衰えてしまうため、シミやくすみなどの“スマホ焼け”によるダメージが沈着してしまうリスクが高まります。回復力をサポートするために、ビタミンCやビタミンEなど、抗酸化作用のある食べ物を積極的に取ることも心掛けたいですね」
ちなみにビタミンCを多く含む食品にはレモンやキウイフルーツ、ブロッコリーなどが、ビタミンEを多く含む食品にはアボカド、ナッツ類などが挙げられる。
これからは肌を守るためにも、UVケアと同様にブルーライトケアも徹底して、“スマホ焼け”から肌を守ろう。
「女性自身」2020年7月7日号 掲載