「ほんの一口だけのつもりだったのに、ポテトチップスをまるまる一袋食べてしまった。夜中に突然、我慢できなくなって、夜のコンビニに買いに走ってしまった……。そんな人はもしかしたら『食物依存症』かもしれません」
そう警鐘を鳴らすのは、アメリカ・ボストン在住の内科医で、以前、ハーバード大学の研究員として「食と健康」の調査を続けてきた大西睦子先生。アルコールやたばこ、ドラッグと同じように、食べ物にも依存する人は多いそう。
「どのような食べ物が依存症に陥りやすいのか、今年2月、ミシガン大学(米国)の研究者らによって興味深いレポートが発表されました」(大西先生・以下同)
アメリカ人が日常食べている35品をリストアップし、キャンパスで募集した120人の学生と、約400人のWebからの参加者に対し、アンケート調査を行った。上位10食品は次の通り。
【1】ピザ
【2】チョコレート
【3】ポテトチップス
【4】クッキー
【5】アイスクリーム
【6】フライドポテト
【7】チーズバーガー
【8】ソーダ
【9】ケーキ
【10】チーズ
「下位にはナッツやバナナ、きゅうりなど加工されていない自然の食品、上位にはチョコレートやケーキ、ポテトチップス、チーズバーガー、ソーダなど加工食品やファストフードが占めるという傾向が見られました」
スナック菓子やファストフードの食べすぎが体によくないことは以前から指摘されていること。それでもやめられないのは、意思の強さの問題ではなく、依存症の可能性が考えられるのだ。食物依存症の研究は古く、’56年に、アメリカのアレルギー専門医がとうもろこしや小麦などに依存症が認められるという論文を発表している。
「’08年にはプリンストン大学のアヴェーナ博士らが『砂糖を多く含む高カロリー食品が依存症が強い可能性がある』と発表し、その後も多くの大学の研究で、塩分や添加物を含む食品も依存症が高いことがわかってきています。ミシガン大学の研究結果はそれらを裏付ける形となりました」
依存症のメカニズムは違法なドラッグと同じ。簡単には抜け出せないという。
「ドラッグを得ることでドーパミンという脳内物質が分泌されます。ドーパミンは快楽や満足感に深く関連する脳内の神経伝達物質。これが枯渇すると、同じ方法で快楽を得ようと繰り返し、さらに量を増してドラッグを求め、依存症になる。食べ物についても同じことが言えます」
ドーパミンはストレスを和らげ幸せな気分にさせる、人間にとって必要な物質だが、大西先生は「自分へのご褒美として適量に食べるのは問題ありませんが、自分の意志に反して習慣化するのは注意が必要です」と話している。