「13年にわたる追跡調査で“認知症になりやすい人”について分析した結果、うつ傾向がある人、脳卒中・糖尿病・心臓病の持病がある人など、8つの危険要因が判明したそうです。そのうちの1つが、“握力が弱い人”でした」(医療ジャーナリスト)
今年7月、国立長寿医療研究センターが発表した、認知症の発症リスクに関するデータが話題を呼んでいる。握力が男性で26キロ未満、女性で18キロ未満の人は、そうでない人に比べると、認知症のリスクが、なんと2.1倍も高かったというのだ。
「高齢者の体力を評価するうえで、重要な要素は3つあります。(1)握力、(2)歩行機能(歩く速さ)、(3)平衡性です。この3つを測れば、その人の体力水準がわかるのですが、私たちが特に重要視しているのが、握力と歩く速さです。これまでも、いくつかの研究データで、握力が弱い人ほど認知症になりやすく、また寿命も短いという結果が出ています」(東京都健康長寿医療センター研究所・谷口優研究員)
厚生労働省によれば、認知症の高齢者は、昨年の時点で全国に約520万人。さらに9年後の’25年には、700万人に達するとみられている。もうすぐ高齢者の5人に1人が認知症という「“超”認知症社会」が訪れるわけだが、“握力UP”は、有効な予防策になると言う。そこで、専門家たちが提唱する6つのトレーニングを紹介!
■ペットボトル回転運動
1.両手にペットボトルを1本ずつ持ち、両手を前に伸ばす。
2.腕はそのままに、ペットボトルを内側へ、ゆっくり手首を回転させる。
■雑巾しぼり運動
1.乾いた雑巾やタオルを両手とも順手で持ち、両腕を前に伸ばす。
2.腕の位置を変えずに、雑巾をしぼるように、片手を手前に、もう3.片方の手を逆に回す。
反対側へ同様にしぼる。
左手を順手・右手を逆手、さらに左手を逆手・右手を順手にして、同様に運動を。
■タオルにぎにぎ運動
1.タオルの両端を持ち、両腕を前に伸ばす。
2.呼吸を止めずに、“握るからゆるめる”運動を繰り返す。
「ペットボトル回転運動は500mlのボトルを使用します。でも重く感じるようでしたら、水の量を減らしたり、もっと小さなペットボトルを使用したりしてもいいでしょう。また、雑巾しぼりがキツイ人には、『タオルにぎにぎ運動』をおススメします。こちらはタオルを強く握ることを繰り返すだけなので、より手軽にできますよ。運動の際には呼吸を止めてはいけません。目安は1日に各10回×3セットですが、ツラいようでしたら、あまり回数にはこだわらなくてもいいと思います」(老化を防ぐ運動について詳しい、松本大学大学院・根本賢一教授)
■耳鼻つまみ運動
1.右手で鼻をつまむと同時に、左手で右耳をつまむ。
2.手を1回たたく。
3.左手で鼻をつまむと同時に、右手で左耳をつまむ。
※「イチ、ニ、サン」と声を出しながら運動する。2で1回手をたたくことに慣れてきたら、2回、3回、4回、5回と手をたたく回数を増やしていく。
■グーチョキパー運動
1.右手をグーにして前に突き出す。左手は腰に。
2.左手をチョキにして前に突き出す。右手は腰に。
3.右手をパーにして前に突き出す。
4.左手をグーにして……というように繰り返していく。
※ウオーキングなど有酸素運動をしながらだと、さらに効果が。
■高く高く握りこぶし運動
1.手を握り、両腕をまっすぐ伸ばす。30センチほど右腕を上げる。
2.右腕を戻し、左腕を30センチほど上げる。
3.左腕を戻し、右腕を思いっきり真上にあげる。
4.右腕を戻し、左腕を30センチほど上げる。
5.左腕を戻し、右腕を30センチほど上げる。
6.右腕を戻して、左腕を真上に上げる。
※リズミカルに行う。余裕のある人は500mlのペットボトルを持つと、筋力トレーニングにもなる。
「筋トレをしながら脳を使えば、認知機能低下や認知症予防としては、より効果的です。たとえば『耳鼻つまみ運動』を行うことによって、前頭葉のほか、言葉の理解、記憶や物事の判断、感情などをつかさどる側頭葉の活動を高めることができるのです」(脳科学者の諏訪東京理科大学・篠原菊紀教授)