「複数の保険会社で商品の設計などに関わってきた専門家が『大半の保険はストーリーの力で売られていると思います』と話していました。がん保険なら『2人に1人ががんになる』時代、保険で備えなければ大変なことになるかも?というストーリーです。テレビCMなどを見て『もし私ががんになったら……』と不安な気持ちになる人もいるでしょう。しかし、あくまで“お金を用意する一つの手段”として冷静に見る必要性を感じます」
こう語るのは、『生命保険は「入るほど損?!」』の著者で、「保険相談室」代表の後田亨さん。「2人に1人が罹患する」……国民病ともいわれるがん。複雑ながん保険は、終身保険や10年更新型などがあり、長く付き合っていかなければならない商品だ。そこで、知っておきたいがん保険の知識を後田さんに加え、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さん、『比較検証がん保険』の著書もある医師の佐々木光信さんに聞いた。
【Q1】がん経験者も保険に入れるの?
「無選択(無告知)型医療保険であれば、年齢制限を満たせば加入できますが、既往症や治療中の病気は対象外、保険料も高くなります。がんが寛解、完治していなくても申し込みができるのが引受基準緩和型医療保険ですが、加入後1年間は受け取れる保険金額が契約の半額になるというデメリットも。がん経験者向けのがん保険商品は少なく、ハードルが高いのが現状です」(黒田さん)
【Q2】女性に特化した商品に入るべき?
「がんに罹患、死亡する可能性は男性のほうが高いため、保険料も高くなる。しかし女性専用の保険は、女性用の保険料率を用意しているので、安いのが特徴です。しかも、男女共通する大腸がんの手術でも、子宮を摘出するような場合は、保障の対象内となる商品もありますので、加入前にチェックしておきましょう」(佐々木さん)
【Q3】無事故ボーナス付きがん保険はお得なの?
保険商品の中には「○年間、がんと診断されなければお祝い金を支給」という“お得”な商品があるが、これはとても注意が必要。
「お祝い金の分、月々の保険料が高くなります。ですから、お得でも何でもない、と強調しておきます。自動車保険などでは、たとえば、10万円までの車両の修理費は自己負担にするという条項をつけて、保険料を抑える設計を好むお客様も少なくありません。巨額のお金がかかる賠償責任問題などでなければ保険には頼らないことにするわけです。がん保険の“無事故ボーナス”は保険でしか用意できない額でしょうか?判断のポイントはそこです」(後田さん)
【Q5】昔、加入したがん保険は今も通用する?
「とくに’89年以前に契約したがん保険は注意が必要です。当時は長期間の入院が当たり前だったのでしょうか、入院と死亡保障が厚くなっています。一方、その後の多くのがん保険に付加されている『診断給付金』がありません。今の前立腺がん治療のように日帰り手術で済むような場合、’89年以前の保険では入院給付金も一時金も受け取れません」(後田さん)
いま一度、保障内容や条件を確認することが大事だ。
【Q5】 先進医療特約100円は安い?
“先進医療”と聞くと、どうしても200万円、300万円と高額になるイメージがあるが、そうした高額医療をカバーする特約は、100〜200円ほどで付加できる。
「わずかな掛金であるものの、あくまで特約なので、主契約を結ばなければ受けられません。ただし最近では500円で単体で加入できる商品も出てきました。通常のがん治療は自費で、高額な先進医療のみを保険でカバーすることも可能となります」(黒田さん)
がん保険の思わぬ落とし穴にはまらないためにも、“セールスマン”よりがん保険に詳しくなっておこう!