「結婚後も外に働きに出る人が増えたことにより、仕事でのストレスや、ライフスタイル自体の変化、さらに食生活の欧米化など、女性をとりまく社会環境は大きく変わりました。それとともに、10〜20年ほど前から、おもに男性がかかると思われていた病気になる女性が増えています」
飲酒に喫煙、仕事上のストレスで、とくに働く女性の毎日が男性化することにより、かかる病気も“オッサン化”しているーーそのことに警鐘を鳴らすのは、日本生活習慣病予防協会の池田義雄理事長。タニタの体重科学研究所の名誉所長も務め、生活習慣病の第一人者である池田先生によれば、“中年男性の病気だから、女性がなるわけがない”ーーそう考えることが危険だという。
「“男性特有の病気”だと思い込んでしまったことで、疾病の発見・治療が遅れるケースもあります。これまでは男女差があり、男性に圧倒的に多いといわれてきた病気であっても、社会環境の変化により、女性がかかってしまう可能性があることを、女性の皆さんがしっかり意識しておくことが大切です」
そんな、“男性特有”と思われていたにもかかわらず、近年になり、女性にも増えてきている病気に痛風がある。風が当たっても痛いーー痛風は、高尿酸血症(尿酸値が高い状態)が続くことで、血液中の尿酸が関節に沈着、炎症を起こし、激しい痛みが走る発作をともなう病気だ。
痛風の患者数は、現在100万人ほどといわれるが、そのうち女性患者は6%。30〜50代の男性が圧倒的に多い。しかし、’92年に行われた東京女子医科大学の調査では、女性患者の割合は1.5%。実にこの30年で4倍に増加したことになる。しかも、今後、女性の痛風患者がさらに増える可能性がある。池田先生はこう語る。
「女性ホルモンには尿酸値が高くなることを抑える働きがあります。つまり女性ホルモンが減少する閉経後に、尿酸値が高くなる傾向があるわけですが、それでも痛風発作まで起こす女性は少なかった。ところが最近、女性で尿酸値の数値が高めの人が急増。とくに閉経後の女性の痛風発作が増えています。肥満、ストレスなども影響していますが、体内で尿酸に変わるプリン体の取りすぎも、大きな要因のひとつです」
プリン体は“うまみ成分”に含まれ、レバー、内臓、魚卵、干物などに多い。また、ビールに多く含まれていることはよく知られている。仕事帰りに、焼き鳥やもつ鍋を食べながら、生ビールをグビリ……。かつては男性の専売特許だったが、それを楽しんでいる女性も、現代では少なくない。
「ビールだけでなくアルコール自体に尿酸値を上げる作用があります。だから飲酒を控え、プリン体の多い食品の摂取量を抑えることが重要なのです。また、ダンスやホットヨガといったハードな運動をする女性も最近は増えていますが、発汗量が増えて、体内の水分が減っても、尿酸は体外に出にくいため、尿酸値は高くなります。さらに運動後にビールを飲んだりすると、一気に危険な状態に……。とくにこれからの暑い季節は、水分をこまめにとるなどして、しっかりケアすることが必要です」