今年の夏も猛暑になるとの予報が出ている。夏バテには十分注意したいところだが、実は昨今の夏バテ、暑さが原因ではないというのだ。その本当の原因とは……。
「現代の夏バテの原因のほとんどが“冷え”なんですよ」
暑さの真逆、冷えが原因!?驚きの新事実を語るのは“冷えとり”をテーマにした著書も多数あるイシハラクリニック副院長、石原新菜先生。
「夏の体は、交感神経が優位になる冬と異なり、副交感神経が優位に働き、熱を作らないようにできています。にもかかわらず、現代では冷房の効きすぎた部屋にいることが多いうえ、冷たいものを食べたり薄着をしたりと、体を冷やしてばかり。現代人の体は、夏こそ冷えやすくなっているんです」(石原先生・以下同)
たしかに、ひと昔前まで夏バテの原因は暑さだった。しかし今は、冷房のもとで過ごす時間が長い人のほうが増えているのに、夏の生活習慣は昔のまま。
「冷房で体を冷やしたうえ、冷たいものを摂取して内臓を冷やすと、胃腸が弱って食欲不振になり、自律神経も乱れてしまいます。さらに、体が冷えると血流が滞ります。血液は体に必要な栄養素を臓器へ運んだり、老廃物などを回収したりする役割があるので、血流が滞ると臓器すべてが不調になります。これが“冷え”による現代の夏バテの正体なんです」
冷えは万病のもと。一見、健康にいいようで、実は体を冷やす行動を、私たちはたくさんしているという。夏の体を冷やすNG習慣は以下のとおり。
■温かい緑茶を飲む
「旬の食材を取り入れるのは健康食の基本ですが、夏の野菜や果物は体を冷やすものが多いんです。体温を下げるすいかやトマトなどは冷房が普及する前の夏には不可欠でした。でも、現代では、体を温める作用がある食材と一緒に食べるなどの工夫が必要です。漢方医学では、食材を体を温める“陽性”(鶏肉、根菜類、納豆、そば、塩など)、冷やす“陰性”(夏野菜、牛乳、砂糖など)、その中間の“間性”(ごま、キャベツなど)に分けて考えます。夏冷えを防ぐため、陰性の食物ばかりを取らないよう注意しましょう」
飲み物でいえば緑茶や麦茶は陰性、紅茶やウーロン茶は陽性だ。
「温かい緑茶より、冷たくても紅茶やウーロン茶を飲んだほうが、結果的に体は温まります」
■朝食にヨーグルトや葉物野菜のスムージーを取る
「ヨーグルト自体は“間性”食材ですが、朝から内臓を冷やします。食べるなら、温かいスープやしょうが紅茶などを一緒に取りましょう。また、葉物野菜のスムージーは“陰性”なうえに冷たいので、体を徹底的に冷やすNGドリンク。スムージーはりんごやにんじんなど“陽性”食材で作りましょう」
■塩分を控える
「高血圧予防のために塩分を控える人も多いですが、実は女性の高血圧は冷えが原因のことが多いんです。塩には新陳代謝を上げ、体を温める効果があるため、過度な減塩は冷えを招きます。減塩が、逆に高血圧を引き起こすことがあるんです」
■フィットしたパンツやハイヒールをはく
「夏はゆるい服のほうがいいです。ぴったりしたスキニーパンツなどは一見、体を温めそうですが、締めつけられるために血流が滞り、その結果、体を冷やします。さらに肩こりや頭痛の原因にもなります」
同じ理由で、ヒールの高いパンプスもよくない。足先が出ていたとしても、ペタンコサンダルのほうが体を冷やさない。
■鎮痛剤を飲む
「鎮痛剤や解熱剤には体温を下げる作用があるので、極力避けましょう。打撲や捻った以外の痛みは温めたほうが引きます。頭痛は熱い湯船につかると治りやすいですよ」
では、冷えバテを防ぐためにはどうすべきか。石原先生が実践する冷えとり習慣を聞いた。
「冷房が効きすぎているところが多いので、出かけるときは必ず羽織りものを持ち、クリニックにはブランケットを常備しています。また、筋力が減ると熱の産生量が減って冷えやすくなるので、運動も欠かしません。みなさんにぜひ取り入れてほしいのが、腹巻きです。内臓を温めるのに、もっとも手軽で効果的な方法です。絹製のものだと、夏でもサラッと着心地がいいですよ」