肩こりや腰痛など、長年悩まされているその不調。実は「足の指」の異常からきているものかもしれない――。
「日本人の多くが肩こりや腰痛に悩まされていますが、その原因は“足の指”にあります。ふだんからあまり注目されていないのですが、足の指は体のバランスを保つのにとても重要な部位です。立ったときに地面に着いていない浮いた状態の足の指が1本でもあると、“浮き指”といい、さまざまな症状につながることがわかってきました」
こう指摘するのは、桜美林大学特任教授の阿久根英昭先生。阿久根先生は40年以上、足の研究に携わり、足のゆがみと体の不調などをテーマに研究をしている。これまで10万人以上の“足裏の形”を計測しているなかで見えてきたのは、かかとに重心がかかり、足の指が浮いてしまう人が増えていること。しかも、なんと男性の6割、女性の8割が浮き指の状態になっているという。
「なぜ浮き指になるかというと、足の裏の母指内転筋が弱っているからです。現代人は草履ではなく、靴を履く習慣が根付いています。足の親指と人さし指で鼻緒をつまみながら歩くことがないので、母指内転筋の力が衰えてきました。この筋肉が衰えると、足の甲のアーチ構造がつぶれて指先が上がってきます。重心が後ろにかかり、そこでバランスを保とうと無意識に上半身を前傾させて、猫背になってしまいます。頭の重さを支えるために肩の筋肉が引っ張られて負担がかかり、肩こりや腰痛につながると考えられています」(阿久根先生・以下同)
調査では浮き指になると、頭痛や肩こり、腰痛のほかにも、循環器系や消化器系など、内臓の不調を訴える人がいたという。また、重心が後ろに下がり、前方に踏ん張る力が弱くなることで、転倒のリスクも高まる。中高年は特に注意が必要だ。
自分が浮き指かどうかチェックしよう。阿久根先生は「足底圧計測機」を使っているが、機械がなくても簡単に調べられる方法があるという。
「はがきや名刺ぐらいの厚さの紙を1枚用意して、平らな場所で10センチぐらい足を開き、まっすぐに立って前を向きます。そして、家族など別の人に足指の下に紙を差し込んでもらいます。紙が入らなければ、指にしっかりと体重がかかっている証拠。どれか1本でも指の下に紙が入ると浮き指の状態ということになります」
浮き指を改善するためには、足の指の間を広げる「足指体操」を毎日繰り返してみよう。阿久根先生がすすめるのは、主に次の4つ。1日5分、家の中でくつろいでいるときのスキマ時間を使ってトライ!
1)まず椅子に座って、膝の上に片方の足首を乗せる。足の裏と手のひらを合わせるようにして、足の指の間に手の指を1本ずつ入れて組み、その状態で5~10秒キープする。あまり力を入れすぎないのがコツ。
2)次に、足の指と手の指を組んだ状態で、足の甲のほうにゆっくりと軽く曲げて、その状態で5~10秒キープ。
3)今度は足の裏のほうへゆっくりと軽く曲げて、その状態で5~10秒キープ。
4)足の親指と小指を右手と左手でそれぞれつまみ、横にゆっくりと広げて5~10秒キープ。
これを各5回ずつ、両足行ってみよう。こり固まった足の甲の筋肉をほぐすことで浮き指を改善する効果があるという。実際に、浮き指だった人がこれらの体操にチャレンジしたところ、浮き指が解消されるとともに、肩こりや腰痛の痛みも和らいだ、といった報告もあったそうだ。
「足の指でグーパーしたり、足の指で雑巾をつまんだりして、ふだんから足の指を動かしてみましょう。また、浮き指の原因の1つには靴もあります。つま先が細くなっている形やヒールが高い、あるいは厚底など、足に負担がかかる靴は避けて、なるべく足先がゆったりしたタイプの靴を選ぶようにしましょう」
これであなたも、肩こりや腰痛とおさらばだ。