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昨年の厚生労働省の発表によると、日本人女性の平均寿命は87.26歳、健康寿命は74.79歳だった。「健康寿命」とは、「健康上の問題がない状態で、日常生活が制限されることなく自立した生活ができる期間」のことを指す。すなわち、女性は人生の最後の約12年半、介護など周囲のサポートを必要としていることになる。

 

この平均寿命と健康寿命の差が生まれる原因の多くは「運動器の障害」によるものだと、国立長寿医療研究センター・ロコモフレイルセンター長でロコモフレイル外来の松井康素先生は指摘する。

 

「運動器とは、筋肉、骨、関節などを指しますが、これらの機能が衰えた結果、自由に動けなくなり、歩行や日常動作に支障をきたすことを『運動器の障害』、またはロコモティブシンドローム(通称ロコモ)と呼んでいます」

 

日常生活で支援が必要になった原因(’16年・国民生活基礎調査より)を見ると、関節疾患が20%、骨折・転倒が11.4%、合計31.4%で、ロコモがトップを占めるのだ。

 

「高齢になると足腰が弱り、若いころのようには動き回れなくなりますが、それは加齢のせいだけではありません。体が虚弱化していく予備期間のようなものがあるのですが、このときに運動量や栄養が不足すると、体のさまざまな機能が衰えてロコモがますます進行するのです」(松井先生・以下同)

 

ロコモを防ぐために、丈夫な筋肉や骨、関節を作るには、日常的な運動だけでなく、必要な栄養素をしっかりと摂取することも不可欠だ。

 

「筋肉を作るうえでベースとなる栄養素はタンパク質です。筋肉を増やし、脂肪を減らすものを選ぶのが大切です」

 

それに該当するのが、主に鶏肉、魚、卵、大豆食品、乳製品など。これらの食品に多く含まれる必須アミノ酸が、筋肉のもととなる。

 

「中高年以上の成人女性が1日に必要なタンパク質は50〜60グラムですが、それは体に吸収される分量。それだけの量を吸収するためには1日100〜150グラムのタンパク質を摂取することが必要です」

 

丈夫な骨を作るにはカルシウムとビタミンD、さらに骨質を上げてくれるビタミンKも重要だという。カルシウムは乳製品、大豆食品、しらす、めざしなどの小魚類、小松菜、水菜、切り干し大根といった野菜に多く含まれている。1日に500〜600ミリグラムを目安に取るようにしよう。

 

ビタミンDはカルシウムの吸収を高めるためにも不可欠な栄養素だが、実は筋肉を作る役割もある。サケ、サンマ、ブリなどの魚介類、乾燥しいたけ、しめじなどのきのこ類、緑黄色野菜に多く含まれている。

 

意外と知られていないのがビタミンK。これは丈夫な骨を作るのに必要な「オステオカルシン」というタンパクの形成を促す栄養素だ。

 

■ビタミンKが豊富な食品(100g中の含有量)

 

ひきわり納豆:930マイクログラム
パセリ:850マイクログラム
しその葉:690マイクログラム
乾燥ワカメ:660マイクログラム
焼きのり:430マイクログラム
春菊(ゆで):460マイクログラム
ほうれん草(ゆで):320マイクログラム
小松菜(ゆで):320マイクログラム
昆布の佃煮:310マイクログラム
紅茶:1,500マイクログラム
緑茶:1,400マイクログラム

 

1日150マイクログラムを目安に取るようにしたい。

 

「いろいろな食品をバランスよく取ることで、栄養の相乗効果も期待できますので、筋肉や骨の生成に必要な栄養素を意識しながら、偏らない食事を心がけるようにしましょう」

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