「万病のもとといわれる冷え性ですが、最近、40〜50代の女性に急増しているのが内臓冷え性。もともと60歳以上の高齢者にしか見られなかったタイプで、重大な病気になるリスクが高くなる、もっともたちが悪いものです」
そう語るのは、イシハラクリニック副院長の石原新菜先生。あまり聞き慣れない内臓冷え性とはどんなものか? 冷え解消のスペシャリストである、石原先生に解説してもらおう。
「冷え性は、大きく分けて『末端冷え性』、『下半身冷え性』、『内臓冷え性』と3つのタイプがあります。20〜30代の女性に多いのが、手足が冷える末端冷え性。40〜50代に多いのが、足腰が冷える下半身冷え性。この下半身冷え性を放置して、状態が悪化したのが、体の中心であるおなか全体が冷えてしまう内臓冷え性です。自分で体温が上げられなくなり、さまざまな不調を招きます」
しかも、この内臓冷え性は「隠れ冷え性」といわれるように自覚症状がないという。
「40〜50代で内臓冷え性になる人が増えた背景には、慢性的な運動不足やストレスなどがあると考えられています。これまでにも夏になると、冷たい飲み物をとりすぎたり薄着になったりすることで体の深部が冷え、内臓冷え性になる人がいましたが、秋ごろには改善するのが一般的でした。しかし、最近は1年を通して、内臓冷え性になってしまうのです。しかも、体の深部は冷えていても手足がほてっていたりするため、自分の体が冷えていることに気づきません」
内臓冷え性だと気づかずに、体を冷やそうとして、悪循環に陥るケースも少なくないようだ。
「それまで冷え性だった人が、更年期を境に、暑がりになった場合は要注意です。これは冷え性が解消されたのではなく、それまで子宮や卵巣に巡っていた血液が、生理がなくなることで上半身に集まり、のぼせやほてり、イライラや動悸をおこすため。いずれも内臓冷え性の症状ですが、病院に行っても異常が見つからず、冷えに気づきにくいのです」
この内臓冷え性になんらかの手を打たずに放置しておくとさまざまな病気を引き起こすという。
「胃や腸、すい臓のほか子宮や卵巣などの臓器が冷えることで内臓機能が低下。下痢や便秘、胃腸や胃もたれ、生理痛などの原因に。多くの血管が集まる内臓が冷えることで、全身の血流が悪化。肩こりや腰痛、不眠や疲れやすくなるなどの不調を招きます。さらに心筋梗塞や脳卒中などの重篤な病気を招く動脈硬化の進行を早める可能性もあり、高血圧や糖尿病などの生活習慣病リスクも高くなります。また、最大の免疫器官といわれる腸には、全身の免疫細胞の7割が存在しているのですが、冷えることで免疫力が低下。風邪をひきやすくなったり、アレルギー症状を引き起こしたりするだけでなく、私たちの体で毎日、5,000個できるがん細胞の増殖を防ぐことが難しくなってしまうんです」
内臓冷え性の解消の近道は筋肉をつけることだという。
「人間の体の体温の4割以上は、筋肉から作られます。冷え性が男性に少なくて、女性に多い理由は、単純に筋肉量の差。根本的に冷えを解消するには、筋力をアップさせて、自分から熱をつくることです」
冷えとり解消の筋トレは次のとおり。仕事や家事の合間、さらにはウオーキングなどの有酸素運動の前に行うと効果的だという。筋トレでぽかぽか体質になろう!
【壁腕立て伏せ】
両腕を肩幅よりもやや広げて、壁に手をつき、「ひじを曲げて胸を壁に近づける→ひじを伸ばして元の姿勢に戻る」を10回繰り返す。
【バンザイ運動】
両手を肩幅に開き、ひじとわき腹を伸ばして、勢いよく腕を上げ下げする。1日10回×5セット。
【もも上げ運動】
背筋を伸ばし、片足ずつ太ももを引き上げる。前かがみにならないように左右各10回を5〜10セットを目安に。
【寝ながら腹筋】
あおむけになり「両ひざを曲げながら胸に近づける→元に戻す」を1日30回繰り返す。
「全身の筋肉の75%は下半身についているので、下半身を中心に鍛えれば、効率よく熱を作り出せるのは確か。でも、疲れもたまりやすくなります。長続きさせるためには、上半身から下半身という順番で運動したほうが疲れにくく効率的です。また、腹筋やもも上げは、負荷をかけながら少しつらいと思うくらいまでするのがコツ。とくに腹筋によって、内臓のまわりに筋肉で“腹巻き”をつくると、内臓を温めることができます。お風呂に入る前や寝る前の習慣にしてください」