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「トイレットペーパーはマスクと同じ原料だから、これから製造できなくなる。製造元も多くが中国なので、輸入がストップする」

 

新型コロナウイルスの感染者が日に日に増え、不安感と連動するように、ちまたでは不確実な情報が拡散されている。冒頭のような“デマ”がネットでは出回り、ドラッグストアから一斉にトイレットペーパーが消えたのも、記憶に新しいだろう。

 

しかしいま出回っているのは、必需品についてのデマだけではない。ともすれば“命の危険”にもつながるような、医療についての誤情報が出回っている。

 

「ネット上では『○○をすれば新型コロナウイルスには感染しない』という“ニセ医学”が出回っています。この騒動に乗じて注目を集めたいのか、医師免許所持者でさえ、首をかしげたくなることを言いだしているんです」

 

こう話すのは、『“意識高い系”がハマる「ニセ医学」が危ない!』(扶桑社)の著書をもつ、五本木クリニック院長の桑満おさむ先生。ちまたでささやかれる“医療のウワサ”を集め、論文をもとに真偽を確かめる“ニセ医学バスター”としてブログを投稿している。

 

ウイルス対策として出回ったデマを、桑満先生に斬ってもらった。

 

【1】「二酸化塩素」による除菌が感染リスクを下げる

 

殺菌成分が高いとされる二酸化塩素を用いた除菌グッズは、「ウイルスを99%以上除去する」と注目された。

 

「しかし、実際に二酸化塩素を室内で使用しても、感染リスクの低下はほとんど認められなかったという質の高い論文が、日本環境感染学会から発表されています。また、国民生活センターの見解でも、実際によって除菌効果は不明だったと公表しています」(桑満先生・以下同)

 

桑満先生は、「除菌」や「抗菌」という言葉を含む情報には注意を払うべきだと指摘する。

 

「どちらも洗剤業界が売り文句として作った言葉で、医学用語ではありません。そもそも、ウイルスと菌は全くの別物ですから、除菌作用がある=ウイルス感染予防となる、という論法には根拠がないのです」

 

【2】花こう岩を枕元に置くとウイルスが“死滅”する

 

「ウイルスの分解に即効性がある」として、フリマアプリで花こう岩が2,000円~数万円と、高額で売買されている。

 

「花こう岩とは、お墓によく使われる御影石のこと。河川敷にたくさん落ちているような、普通の石でもあります。殺菌作用があるという科学的根拠はありません。この理論が正しいとすれば、“墓地で生活すれば安全”ということになってしまうでしょう」

 

デマの発信源となった記事では、“ウイルスは放射線で破壊され死滅する”とされている。

 

「花こう岩は、自然放射線を放出する石として知られています。しかし、これと新型コロナウイルスは全く関係がありません。ウイルスは生き物ではありませんから、『死滅』という言葉を使っている情報は“ニセ医学”である可能性が高いです」

 

【3】銅イオンを含むマスクに感染予防効果がある

 

桑満先生によると、クラウドファンディング(ウェブサイト上での開発資金調達サービス)を利用して、「銅の除菌効果を利用したマスク」の開発を目指す企業も登場しているのだとか。

 

コロナ禍のいま、マスクにも注目が集まっているだけに、画期的なアイデアにも思える。同企業のサイトには、銅イオンにレジネオラ菌という細菌を加えて培養したところ、レジネオラ菌が“死滅”したという実験結果も。

 

「確かに、ウイルスを銅の表面に載せて、ウイルスの減少をカウントした研究はあります。しかし、銅がウイルスを完全に不活性化するには4日間かかりますので、その間に感染が成立してしまいますよ(苦笑)」

 

桑満先生は、いまむやみに新しい情報には飛びついてはいけないと忠告する。

 

「新型コロナウイルスの情報は世界で共有するために、論文がすぐに掲載される傾向にあります。それはとても有意義なことですが、これから再検証され、精査されていくもの。どんな情報が発信されたとしても、効果があるんだと思い込むのは早すぎます。結局、感染予防にいちばん有効なのは、『手洗い』『密閉・密集した空間に行かない』『人と密着しない』ことです」

 

「女性自身」2020年4月21日号 掲載

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