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「トイレットペーパーはマスクと同じ原料だから、これから製造できなくなる。製造元も多くが中国なので、輸入がストップする」

 

新型コロナウイルスの感染者が日に日に増え、不安感と連動するように、ちまたでは不確実な情報が拡散されている。冒頭のような“デマ”がネットでは出回り、ドラッグストアから一斉にトイレットペーパーが消えたのも、記憶に新しいだろう。

 

しかしいま出回っているのは、必需品についてのデマだけではない。ともすれば“命の危険”にもつながるような、医療についての誤情報が出回っている。

 

「ネット上では『○○をすれば新型コロナウイルスには感染しない』という“ニセ医学”が出回っています。この騒動に乗じて注目を集めたいのか、医師免許所持者でさえ、首をかしげたくなることを言いだしているんです」

 

こう話すのは、『“意識高い系”がハマる「ニセ医学」が危ない!』(扶桑社)の著書をもつ、五本木クリニック院長の桑満おさむ先生。ちまたでささやかれる“医療のウワサ”を集め、論文をもとに真偽を確かめる“ニセ医学バスター”としてブログを投稿している。

 

ウイルス対策として出回ったデマを、桑満先生に斬ってもらった。

 

【1】ビタミンDに予防効果がある

 

「青魚などに含まれるビタミンDの摂取は、インフルエンザ予防に効果あり」とする論文が発表されている。“新型コロナウイルスにも効果てきめん”とうたうサプリメントや健康食品も……。

 

「医学論文があるので、強気で主張している医師はいます。ただし現段階で、新型コロナウイルスへの効果は確認されておらず、十分な裏付けはなし。英国の公衆衛生庁は、研究結果に対して批判的なコメントを寄せていますし、日本の公的機関である国立健康・栄養研究所も、根拠なしと注意勧告を出していますから、ビタミンDで感染予防をしようと思わないほうがいいでしょう」(桑満先生・以下同)

 

【2】「正露丸」がウイルスの成分を破壊する

 

大幸薬品が発売する医薬品「正露丸」を巡って、3月2日に、かつて衆議院議員に立候補経験のある人物が自身のツイッターで“新型コロナウイルスに効く”と拡散。(ツイートは現在削除済み)

 

《正露丸の主成分が、コロナウイルスの「外膜タンパク質(エンベロープ)」を破壊する》という趣旨の説明をしていたが……。

 

「外膜タンパク質を破壊するのはアルコール成分ですが、正露丸の中には含まれていません。『外膜タンパク質』のような、聞きなれない専門用語を盛り込むのも、ニセ医学に見られる特徴です」

 

正露丸はあくまで、パッケージに表記されている「下痢」や「食あたり」などの症状への服用にとどめておこう。

 

【3】子宮を温めると、ウイルスへの免疫がつく

 

現役の医師がユーチューブに、「子宮を温めるだけで女性はコロナウイルスにかかりにくくなる」と題した動画をアップした。紹介されている“子宮温熱療法”は、温めたタオルを下腹部に当てると子宮が温まり、血流がよくなって、免疫力が高まるという方法。

 

「じつは、体温が上がると免疫も上がることを明確に示した論文はありません。人体の免疫システムは、わからないことだらけなんです。この動画については、ほかの医師も指摘していますが、体温を上げると免疫が上がるのではなく、免疫を上げるために体温が上がる、というのが正しいところです」

 

医師が発言しているからといってうのみにするのは誤り、と桑満先生は警告する。

 

「専門ではない分野に関して、独自のアイデアを披露する医師もいます。真偽を見分けるのはとても難しいですが、“画期的だから”といって妄信しないこと」

 

【4】お湯を飲めばウイルス感染は防げる

 

「新型コロナウイルスには耐熱性がなく、27度の温度で死ぬ。お湯を飲めば防げる」というメッセージが、LINEなどで多く出回った。家族や友人、知人から送られてきたため、信じて実行した人も多かったようだ。

 

「体温よりも低い温度で、ウイルスを不活性化できるわけがありません。じっさい、感染したときの症状は高熱を伴うケースも多いわけです。不安が増しているいま、身近な人から聞いたり、“医療関係者から聞いた話”と言われたりすれば、内容を信じ込んでしまうのが、この時期の恐ろしさですね」

 

桑満先生は、いまむやみに新しい情報には飛びついてはいけないと忠告する。

 

「新型コロナウイルスの情報は世界で共有するために、論文がすぐに掲載される傾向にあります。それはとても有意義なことですが、これから再検証され、精査されていくもの。どんな情報が発信されたとしても、効果があるんだと思い込むのは早すぎます。結局、感染予防にいちばん有効なのは、『手洗い』『密閉・密集した空間に行かない』『人と密着しない』ことです」

 

「女性自身」2020年4月21日号 掲載

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