コロナ禍、優しかった夫が豹変し暴言を…専門家が語る実例
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コロナ以降、社会を取り巻く生活環境は激変した。不安やストレスを抱えた夫や妻が“ある日突然”、統合失調症や双極性障害、そしてうつ病といった精神疾患を発症するケースが増えているという。

 

「コロナ禍という環境が原因だと断定できる統計資料はまだありませんが、“夫が急変してしまった”という配偶者からの相談件数が増えているのは確かです」

 

こう語るのは、杏林大学保健学部作業療法学科の助教で、「精神に障害がある人の配偶者・パートナーの支援を考える会」(配偶者の会)の代表を務める前田直さん(41)。

 

同会は、精神に疾患がある人の配偶者やパートナー同士が話し合える場として、’16年6月に設立された相談支援組織だ。これまで相談を受けたのは400人以上。そのうち6割は女性で、主に30〜50代からの相談が多いそう。

 

前田さんによると、当事者を支え続ける配偶者やパートナーたちが直面する苦労や困難は、想像を絶するものだという。

 

では、コロナ以降、妻たちからどのような相談が寄せられているのか。相談者の了承を得た案件の一部を紹介しよう。

 

■統合失調症を発症した夫の配偶者A子さん(40代)の場合「被害妄想から“暴走”に……」

 

コロナ禍で在宅勤務になった夫。ある日突然「近所の○○から悪口を言われている」という被害妄想を口にするようになった。

 

それまで夫は普通に会社に通っていたが、リモートワークとなり、家にこもるようになってから、A子さんに対し「どうにかしろ!」と何度も怒るように。

 

A子さんは繰り返される夫の言動を否定しないように、毎日耐えたが、自分自身が精神的に追い込まれるようになり、ついに我慢も限界に。離婚も考えたが、子どもがいるので、これからどう生きていけばいいのかわからない。

 

〈前田さんからの助言〉

「コロナによって生活の場が家だけとなり、社会と分断されたことが発症の要因だったのかもしれません。家庭内での距離をうまく取ることも大事です。1日の中で顔を合わさない時間を作ることも対処法の1つとなります」

 

■うつ病を発症した夫の配偶者B子さん(50代)の場合「優しかった夫が暴言を……」

 

会社勤務を続けている夫。7月ごろからだんだん口数が減り、会話をしなくなった。

 

それまでは優しかった夫だったが、態度が急変。家では常にイライラした状態で、家族に対して不平不満をぶつけるように。これはうつ状態かもしれないと思ったB子さんは、精神科で診察を受けることを勧めたが、夫は拒否。

 

その後も夫の状態は改善されないまま。症状がさらに悪化することにおびえながら、なんとか日常生活を送っていたB子さんだったが、どう向き合えばいいかわからなくなってしまった。

 

〈前田さんからの助言〉

「夫に病院に行ってもらいたいとき、まずは精神科ではなく一般外来で内科の受診を勧めてみてはいかがでしょうか。治療は早期から受けるのがベターですから、“眠れないならちょっと診察を受けてきたら?”と促すのも手です」

 

■統合失調症が再発した夫の配偶者C子さん(50代)の場合「突然、怒りのスイッチが……」

 

もともと統合失調症を抱えていた無職の夫。自粛生活が長期化する中、徐々に精神状態の波が激しくなった。体調が悪いときには「こんなにつらいのはオマエのせいだ!」とC子さんに暴言を吐いたり、当たり散らす頻度が増える。

 

どこで怒りのスイッチが入るかわからず、解決法がわからない。

 

〈前田さんからの助言〉

「毎日30分〜1時間ほど別々の部屋で過ごすようにすると、夫はその間、怒りを誰にもぶつけられず、気持ちがいったんクールダウンすることもあります。たとえば、ヨガやストレッチなどの趣味に費やすといった、自分が1人になれる時間を持つことは非常に重要です」

 

精神疾患を持つ人の配偶者たちにとって大事なことは、“自分は孤独じゃない”と知ることだと前田さんは言う。もし、自分の夫がコロナで精神疾患になってしまったら……。まずは前田さんの助言を参考にして、必ず同じ立場の人たちがいることを思い出そう。

 

「女性自身」2020年12月1日・8日合併号 掲載

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