立ち上がって片足を上げて、どれくらいの時間バランスを維持できるかを測ってみよう。20秒もできない、という人は注意が必要! バランス力がないと、足腰の衰えだけでなく、認知症のリスクも高まってしまうというーー。
「コロナ禍では、『人のいないところに出て、マスクを外して運動をしましょう』と訴えているのですが、やはりどうしても運動不足になりがちです。高齢者を中心に幅広い年代で、体の衰えが懸念されます。さらに私が注意喚起したいのは“バランス力”についてです」
こう話すのは、愛媛大学大学院抗加齢医学(新田ゼラチン)講座教授の伊賀瀬道也先生だ。バランス力とは、姿勢を維持する力のこと。いわゆる“体幹”や“インナーマッスル”とも関係している。伊賀瀬先生の研究では、片足で1分以上バランスを保てない人はバランス力が低下していて、そこから筋肉や骨密度、さらには認知機能の衰えにも影響してくるという。
「高齢者の方々に、片足でどれくらい立っていられるかのテストをしてもらったところ、20秒以上キープできなかった人には、かくれ脳出血やかくれ脳梗塞を起こしているケースが多くありました。同時に、片足立ちが得意でない=バランス力が衰えている人ほど、脳に萎縮が見られる傾向があることもわかっています。片足立ちがどれくらいできるかは、脳の健康のバロメーターともいえるのです」(伊賀瀬先生・以下同)
認知症を予防するためにも、バランス力を鍛え、維持するには伊賀瀬先生が提案する「1分片足立ち」エクササイズが有効だ。どこでも簡単にできるものなので、認知症リスクを遠ざけるためにもぜひ取り組んでみよう。
■1分片足立ち
【1】背筋を伸ばし、視線を前に向け、両足をそろえて立つ。足裏全体をしっかり床につけ、太もも前面の筋肉を意識する。
【2】目は開けたまま、片足を太ももが床と平行になる高さまで上げる。ひざは90度に曲げて1分静止。反対の足も同様に行う。これを1セットとし、1日3回行う。
■後ろに足上げ
【1】背筋を伸ばし、イスから30〜40センチ離れて立ち、状態をやや前に倒してイスの背を持つ。
【2】視線は前に、ひざを伸ばしたまま、片方の足を真後ろにゆっくり上げていく。お尻、太もも裏の筋肉を意識する。できるところまで上げたらゆっくり戻す。繰り返し10回行う。反対の足も同様に行う。これを1セットとし、1日3回行う。
「最初は慣れるまで足首からふくらはぎの部分に少し痛みや張りを感じることがあるかもしれません。ですが、それは筋肉が鍛えられていないためで、続けていくうちに下半身の筋肉が鍛えられて、バランス力もついてきます」
このエクササイズはテレビを見ながら、慣れてくれば歯みがきをしながら、と、“ながら”で行うのが長続きさせるための秘訣だという。
「歯みがきは誰でも毎日するでしょうから、朝と晩の歯みがきタイムで2回、あと1回はテレビを見ながらなど、何かをしながらこのエクササイズを生活に取り入れてみてください」
前方だけでなく、後方にも「1分足上げ」エクササイズを行うと、太ももの後ろから腰にかけての筋肉も鍛えられて、さらに効果的だ。危険防止のためにも、すぐに手をつけるよう壁やテーブルのそばで行うようにしよう。
「片足立ちエクササイズは、重心がぶれないように支える“足裏感覚”も鍛えられます。これもまた若さを保つ秘訣です。40〜50代の女性は、更年期を境に女性ホルモンのバランスにより、骨粗しょう症が進行したり、筋力の低下が著しくなります。これらが進行すると認知機能にも影響が及んでしまいます。全身の健康を保つためにも、バランス力を鍛えることを心がけてください」
片足立ちで、足腰と脳のコンディションを維持していこう。