「ハーブというと、美容やリラクゼーションに使うもの……そんなイメージがありませんか? しかし、西洋ではハーブは薬としても使われています。古くから、病気になると身の回りのハーブで自らを癒してきた歴史があり、現在でもドイツやイギリスでは、薬局に処方用のドライハーブが並び、多くの人に愛用されているのです」
そう語るのは薬剤師の酒井美佐子さん。酒井さんが教えてくれたハーブの中から、夏に起こりがちな食欲不振、消化不良におすすめのものをご紹介。
《「ペパーミント」消化器全般の不調に 》
【効用】食べすぎ、食欲不振、吐き気
【禁忌・注意点】妊娠中は避ける
精油成分l-メントールの香りが中枢神経を刺激。脳の働きを活発にし、眠気解消、集中力アップに効果的。また、食べすぎ、飲みすぎ、食欲不振、吐き気、下痢、過敏性腸症候群など、消化器系の不調全般によい作用を及ぼすとされる。ドイツでは、胃の不調にペパーミント:ジャーマンカモミールを2:1で配合したブレンドティーを使うことがある。
《「ビターオレンジピール(トウヒ)」胃酸を増やし消化促進 》
【効用】消化不良、食欲不振
【禁忌・注意点】通常使用の範囲内では問題ないとされるが、アルカロイド物質を含むため、高濃度摂取は危険性が示唆されている。また、胃や腸に潰瘍のある人は控える
柑橘系の精油と苦味質を含み、芳香性苦味健胃剤に使われてきた。胃液の分泌を高めて食欲を増進する。ほかのハーブとブレンドするのがおすすめ。ドイツのコミッションE※では、食欲不振や消化不良への使用を承認している。
※コミッションE:日本の厚生労働省にあたるドイツ連邦保健庁の専門委員会。医薬品としてハーブを利用する場合の安全性と効果を評価している
《「ダンディライオン(セイヨウタンポポ)」食べすぎによるむくみを取る 》
【効用】食欲不振、消化不良、便秘
【禁忌・注意点】キク科アレルギー、胆道閉鎖、胆のう炎、腸閉塞がある場合は使用を避ける
根には、有用な腸内細菌を増やすとされるイヌリンの含有量が多いことから整腸作用が期待できる。カリウムも豊富でむくみによい。ノンカフェインのヘルシーコーヒーとして自然食レストランで定番。コミッションEでは、食欲不振、消化不良に対する使用が承認されている。
教えてくれたのは…保健医療学の博士で、薬剤師の酒井美佐子さん。水戸中央病院で医療技術部部長として勤務する酒井さんは、カナダとアメリカの大学で学んだ医療用ハーブの知見をもとに、ハーブを取り入れた自然療法を行ってきた。