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「今年の“秋花粉”は、ここ5年間でいちばん飛んでいます。飛散量の多い時期は、11月まで続くので注意が必要です」

 

こう話すのは、花粉研究の第一人者である、埼玉大学大学院理工学研究科・王青躍(オウセイヨウ)教授。

 

今年、秋花粉の飛散量が大幅に増えた原因について王教授は、地球温暖化の影響に加え、今夏の台風が少なかったことを挙げている。

 

「場所によって飛散量は異なりますが、先日、埼玉大学周辺で計測したところ、面積1平方センチメートルあたりの花粉個数が、200~300個も観測されました。例年の同じ時期は20~30個なので、実に10倍の秋花粉が飛散しているのです」

 

秋の花粉症とは、スギやヒノキのような“樹木の花粉”ではなく、イネ科やヨモギ、ブタクサといった“雑草の花粉”が主な原因で発症するアレルギー性疾患である。

 

毎年、春に多く飛散するスギやヒノキの花粉情報はよく耳にするが、このような秋の花粉症に関するリスク情報は、あまり聞く機会がないのはいったいなぜか。

 

「秋花粉の発生源である雑草は、種類が多く、生育状況や飛散期が地域によって異なるため、スギやヒノキに比べて国や自治体もデータを取ることが難しいのです。そのため春の花粉症と違って、特に注意喚起もしない。メディアがあまり取り上げないこともあり、秋の花粉症のことを知らない人はまだまだ多くいます」

 

■新型コロナウイルスの初期症状と類似

 

今の時期のくしゃみや鼻水は、その原因が花粉の場合でも、それに気づかないケースが多いため、王教授は、“隠れ花粉症”と呼び、警鐘をならしている。

 

ちなみに、花粉症の症状とコロナの初期症状は、目のかゆみを除き、非常によく似ている。そんなコロナ禍の今が、秋の花粉症のリスクを高めていると王教授は話す。

 

「外出自粛で運動不足になりがちの人も多いと思います。そうすると免疫力が低下するため、花粉症にもなりやすくなるのです。さらに、自宅にいる時間が長くなるとストレスがたまります。気分転換に自宅近くの公園や、河川敷などに行って、散歩や運動をする人も増えたはず。ところがそういう場所に、今まさに、雑草の花粉がたくさん飛んでいるのです」

 

秋花粉の発生源として、近年増えているのが、ビルや高層マンション周辺の公園や緑地。

 

「敷地内に公開空地を設けると高さ制限が緩和されるため、都市部では、タワーマンションなどの高層ビル周辺に緑地が増えています。そこに雑草が根を張って、花粉を飛ばしているのです。マスクを外して運動などをすると、大量に吸い込む可能性もあります」

 

さらに危険な発生源といわれているのが、丘のように高く、雑草が広くに渡って生い茂る河川敷だ。

 

「河川敷には、ブタクサなどの雑草が数百メートルにわたって点在しています。そこに強い風が吹けば、高い位置から周辺一帯に大量の花粉が飛散する、いわゆるホットスポットになっているのです」

 

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