■コロナ禍が高齢者の健康に及ぼす影響は楽観できない
’12年時点で、日本における認知症患者は約462万人いるとされている(内閣府報告)。なかでも約半数を占めるアルツハイマー型認知症は、加齢とともに脳にゴミがたまり、脳の神経回路が死滅して脳が萎縮する病気だ。しかし、現在のところ、治療法は確立されていない。
一方、認知症の前段階にある軽度認知障害(MCI)の人は、約400万人いると推定されている。MCIは、必ず認知症に移行するわけではなく、脳の働きを正常な状態に回復させることが可能だ。ところが、コロナ禍でその状況が一変してしまったと谷口先生は危惧する。
「近年、先進国における認知症有病率は減少傾向にありました。教育の充実に加えて、積極的な運動や良好な食習慣といった生活習慣の改善により、認知症の発症を抑制できていたと考えています。しかし、この約1年半、コロナによる自粛期間が続いた結果、外出の機会が極端に減ってしまいました。これが高齢者の健康状態にどのように影響しているのかは、まだ明らかになっていません。ただ、運動や食事の習慣が変化したことを考えると、楽観視はできないと感じています」