ある朝起きたら、突然激しいめまいに襲われた……そんな経験はありませんか? じつはそんなめまいの多くは、脳ではなく耳に原因が。自宅でできる、めまいを解消する方法を医師に教えてもらいましたーー。
「ある日、布団から起き上がると尻もちをつくくらいの強いめまいに襲われました。“もしかしたら、脳の病気かも”と、急いで脳神経外科を受診したのですが、原因は耳でした」(50代女性)
40代以降増加する、めまいの悩み。とくに景色がぐるぐると回り、立っていられなくなったり、吐き気を伴うような強いめまいには恐怖を感じる人が多いという。
「ひどい症状から脳と関連する疾患ではないかと心配される方が多いのですが、このような回転性のめまいは、耳を原因とするめまいであることが多いんです」
そう語るのは“めまい外来”で5万人以上の患者を診てきた、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科特任教授で、『めまいは寝転がり体操で治る』(マキノ出版)の著書もある、肥塚泉さん。めまいの割は耳に原因があるという。
「なかでも多いのは、『良性発作性頭位めまい症』といって、三半規管に耳石という小さな石が入って起こるめまい。50代~60代以降で発症することが多く、女性は男性の4~5倍なる人が多いといわれています」
良性発作性頭位めまい症とはどのようなものなのか新潟大学医歯学総合病院耳鼻咽喉・頭頸部外科の堀井新さんが解説してくれた。
「めまいにはフワフワする“浮動性めまい”とぐるぐると周囲の景色が回るような“回転性めまい”があります。良性発作性頭位めまい症は、はっきりと回転性めまいを起こすのが特徴。持続時間は数秒から、長くても1~2分ほど。吐き気をもよおしたり、ひどい場合は嘔おう吐とすることもあります」
頭を動かしたときに起こることが多く、ベッドから起き上がったとき、寝返りを打ったとき、靴ひもを結ぶとき、洗濯物を干すとき、目薬をさすときなど、さまざまな状況で症状が現れる。
耳に原因するといわれると、めまいを起こすことで知られるメニエール病が有名だが……。
「メニエール病は症状が数十分続いたり、難聴や耳鳴りを伴うことが特徴。このような症状があれば耳鼻咽喉科を受診してください。“危険なめまい”は、脳に原因があるケース。めまいのほか、意識の混濁、ろれつが回らなくなる、手足が麻ま痺ひする、立ち上がれないなどの症状があると脳卒中の可能性があるので、早急に医療機関へ」
そもそもなぜ耳が原因で、めまいが起こるのか? それには耳が果たす役割が関係していると前出の肥塚さん。
「耳には、体のバランスを取る役割があり、そのセンサーとなるのが三半規管と耳石器です。三半規管というのは、その名のとおり、3つの半円形の管からできています。管の中はリンパ液で満たされており、頭が動くときのリンパ液の流れ方で、前後・左右・上下、どんな回転運動をしているのかを感受するのです。一方、耳石器という袋状の器官には、目には見えない“ミクロン単位”の細かい粒々である耳石が入っています。三半規管と同じように、頭を動かすと耳石器の中の耳石も動き、頭部に加わる加速度や傾きを感受するのです」