「チョコレートには優れた健康効果があることが明らかになっており、その栄養素がますます注目されています。私自身も、日常的にチョコレートを食べています。連日夜遅くまで仕事をしていますが、かぜひとつひきません」
こう話すのは、栗原クリニック東京・日本橋院長の栗原毅先生だ。予防医学の実践者として活躍する栗原先生は、チョコレート、特に高カカオチョコのもつ効能に以前から注目し、患者さんにもチョコレートを取り入れた食事指導を行っている。
「私の患者さんを診察していても、チョコレートを食べることを毎日の習慣にするようになってから『間食やドカ食いが減った』『体重が減ってきた』『血糖値や血圧、コレステロール値が改善された』など、健康状態がよくなったという人が数多くいらっしゃいます」(栗原先生・以下同)
チョコレートには、カカオポリフェノール、テオブロミン、カカオプロテイン、リグニン(食物繊維)、エピカテキン、脂肪酸、カフェインなど、さまざまな成分が含まれている。 カカオポリフェノールは抗酸化作用が強く、動脈硬化予防、心疾患・脳血管疾患予防、がん予防などの作用がある。カカオプロテインは難消化性のタンパク質で、大腸に善玉菌を運んで腸内環境を改善するため、便通の改善、大腸がんの予防に役立つ。テオブロミンは中枢神経を穏やかにし、血管を拡張して血流をよくしたり、脳内物質のセロトニンの働きをサポートして脳の活性化を促す。
「脳の血流を促進させる働きによって、認知症の予防になるという報告もあります」
さらに食物繊維のリグニンは、腸内環境を整えるだけでなく、糖の吸収を緩やかにする働きがあり、糖尿病の改善、予防になるという。チョコのような甘いものといえば、虫歯や肥満、肌荒れなどに直結するイメージが強いが、それどころか、糖尿病改善に効果的とはなんとも意外だ。チョコを味わいながらこれだけの健康効果を得られるのなら、ぜひ習慣として日常に取り入れたいところ。
食べ方にはポイントがあり、栗原先生がおすすめする方法は、カカオの含有量が70%以上のいわゆる「高カカオチョコレート」をこまめにつまむことだという。
「毎食前や間食時に、個包装されているチョコを1枚(約5g)食べる程度で十分な栄養を吸収できるのに加えて、食事前に取ると、食べすぎを防ぐことにもつながります」
また、チョコの栄養効果をいっそう高めたり、反対に損なってしまったりする“食べ合わせ”がある。その影響を頭に入れておき、チョコのおいしい効果を存分に引き出そう。
【ナッツと合わせると美容効果をプラス】
「ナッツにはビタミンE、食物繊維、オメガ3脂肪酸、鉄、亜鉛などが豊富に含まれていて、腸内環境を整える働きや抗酸化作用などが報告されています。チョコとの相性も抜群で、一緒に食べると相乗効果が得られます」
【黒こしょうと合わせると胃腸の働きを高める】
「消化促進や腸内環境改善の効果が高い黒こしょう。ほかに健胃作用や血流を促進する働きもあります。香りも脳を刺激するので、休憩時に取れば気分をスッキリとさせてくれます」
【緑茶と合わせれば血圧上昇の抑制に】
「緑茶はビタミンC、ミネラル、カテキン、緑茶ポリフェノール、タンニンなど健康成分が豊富。抗酸化作用、コレステロール値低下、血圧抑制、胃がんのリスクを下げるなどの働きが報告されています。特に血圧を抑制する働きの面では、緑茶とチョコの相性がいいと言えます。また、低血圧の人は、寝起きや血圧が低めの状態のときには高カカオチョコは控えるようにしましょう」
反対に、デメリットに注意したい組み合わせもある。
【マヌカハニーと合わせると血糖値スパイクのリスクが】
「マヌカハニーは抗酸化作用などの効果が知られていますが、単糖類であり、体内に入ったときに糖の吸収が速く、血糖値スパイクを招きやすい。その点において、食前にチョコと食べる組み合わせとしてはあまりおすすめできません」
【睡眠薬は薬効低下のリスクも】
「高カカオチョコにはカフェインが多く含まれているため、リラックスや入眠の効果を目的とする睡眠薬は効き目が弱まってしまうことがあります。夜はチョコを控える、あえてカカオ含有量少なめのチョコを選ぶなどを心がけましょう」
効果的な食べ合わせを活用して、チョコの優れた栄養効果を取りこぼすことのないよう心がけたい。