■肛門力を鍛えるには「肛門括約筋」がカギ
そこで、鈴木さんが考案したのが「恥骨タックイン」だ。
「骨盤底筋群は意識して動かすことはできませんが、唯一、肛門括約筋だけは意識して動かすことができる。骨盤底筋全体を効率的に鍛えるトレーニング方法なんです」
恥骨とは、アンダーヘアのあたりにある硬い骨のこと。この骨を内側に巻き込むように下腹部に力を入れながら、肛門を締め上げることで鍛えるのだという。
肛門力がよみがえれば、腰椎の負担が軽くなり、腰痛も解消。さらに3つのメリットがあるという。
「肛門力が上がる=尿道と膣周りの筋肉が強化されることで、尿漏れが改善されます。また、下垂した内臓が引き上がり、ぽっこりおなかの改善につながりますし、上体が安定することで首や肩の余分な力が抜け、慢性的な肩こりも解消されるんです」
では、「恥骨タックイン」はどのような手順で行う?
「恥骨タックイン」は基本的に立った状態で行うが、あおむけに寝た状態で行うと、重力の影響を受けないため肛門を引き上げやすくなり、よりラクにできるという。
【準備運動】
〈1〉足は肩幅で立ち、軸足にしっかり体重をのせる。
〈2〉反対側の足を振り子のように前後に動かす。足の力を抜き、股関節周辺を意識して行う。片足10回ずつ。
【立位の「恥骨タックイン」】
〈1〉中心に軸を通す感じでまっすぐ立つ。
〈2〉足を肩幅に開き、口から息を吐きながら恥骨を内側に巻き込むように力を入れ、肛門を締める。下腹に力を入れたまま3秒キープ。5回行う。
【仰臥位の「恥骨タックイン」】
〈1〉あおむけに寝て膝を曲げ、肩幅程度に足を広げる。手はおへそと恥骨の間にあてる。
〈2〉立位と同じように口から息を吐きながら、恥骨を巻き込み肛門を引き上げるように締める。腰が浮き上がらないように注意。
「まずは、立位の「恥骨タックイン」。背中を伸ばし、息を吐きながら、恥骨を巻き込むように下腹部に力を入れます。そのまま肛門を上に引き上げるイメージで力を入れて3秒間キープ。これを5回ほど繰り返します。コツは、息を吐きながらおなか全体を収縮させていき、5割ほど吐いたところで恥骨タックインをして、力を込めながら息を吐ききるという2ステップで行うこと。1日1回、ゆっくりやっても1分で終わります」
やればやるほど鍛えられるため、慣れてきたら回数を増やし、習慣化することが大切だという。
「1週間ほどで腰がラクになり、尿漏れの頻度が少なくなるなどの効果を実感できるはず。1カ月続けるとかなり改善されます」
「恥骨タックイン」を行うときは、反り腰にならないように注意し、腰痛持ちの人は痛みがない範囲で。
「50代以上の女性は、恥骨タックインの前に、股関節やおしりの筋肉を柔らかくする足の振り子運動を準備運動に取り入れてください。片足で立つので、不安定な人は壁などに手をついて安定した状態で行いましょう」
さっそく肛門力を鍛えて、腰の痛みとはおさらばしよう!