■マスクでは感染を防げない
さらに国立感染症研究所の資料によると、患者10万人に1人に起こる合併症として、亜急性硬化性全脳炎が挙げられている。はしかに感染して2年から10年で発症する中枢神経疾患で、知能障害や運動障害が進行し、6カ月から9カ月で死亡するという。
「また、要注意なのは妊婦。はしかに感染すると、重症化したり、30%から40%の確率で早産や流産を起こすといわれています」
大人にとっても無関係ではないはしか。マスクでの予防はできないという。
「通常の風邪のウイルスよりも小さいため、一般的なマスクでは透過してしまうのです。
また、接触感染、飛沫感染ばかりでなく、空気感染もします。はしかの場合、感染者の周囲には長時間ウイルスが漂い、拡散されるので、感染者と離れていても、同じ部屋にいれば感染リスクがあるのです」
唯一の予防手段はワクチン。現在では定期接種になっているため“打った”と思い込みがちだが、世代によっては接種していない場合もある(右下表参照)。
たとえば’72年9月30日以前に生まれた人、つまり現在50歳以上の人は、1回もワクチン接種をしていない可能性が高い。ただし、はしかは一度感染すると終生免疫が続くといわれているため、はしかに感染したことがあるかをチェックしよう。感染歴のない人は要注意だ。
また、’72年10月1日から’00年4月1日までに生まれた人は、1回はワクチンを接種している可能性が高い。ただし、国は感染の経験がなければ2回目の接種を推奨している。
「過去の感染歴や接種記録がわからない場合は、3千円ほどの抗体検査で、どれだけ抗体を持っているのか調べる方法があります。ワクチン接種をしていない人、抗体が少ない人は、これを機にワクチン接種を。8千円から1万円ほどで受けられます」
一人一人が免疫を持つことで集団免疫ができ、流行を防げるのだ。