■素足になる機会が多い夏はトラブル多発
ふだんは気にならない「足の爪」が目につく夏。痛みを感じなくても異変がひそんでいることがあるという。
足の爪に起こるトラブルで多いものに、爪が内側に巻き込んでくる「巻き爪」や爪の端が皮膚に食い込んで炎症を起こす「陥入爪」などがあるが、菌に感染することで爪の病気にかかるケースがあるので注意が必要という。
「水虫を引き起こす白癬菌というカビ(真菌)の一種が、足だけでなく爪の角質層に入る『爪水虫(爪白癬)』にかかる患者さんもいます。爪の白い溝に縦の線が入り、爪が厚くなってポロポロとはがれやすくなり、爪の全面が白くなるという経過をたどります。市販の水虫の薬では治りません。治療には半年から1年ぐらいかかるので、一度かかるとかなり大変です。水虫は男性がかかると思われがちですが、患者さんの男女比はだいたい半々ですので、水虫にかかっている人はもちろん、家族が水虫になっていたらうつらないよう気をつけましょう」(伊藤院長・以下同)
爪水虫自体に痛みはないが、こちらも巻き爪になることで歩くと痛みが出て、歩行困難になることがあるという。
このほかに、爪の周囲にいぼができる「爪周囲疣贅」という病気は、ヒトパピローマウイルス(HPV)が爪と皮膚の間に侵入して生じる。
菌の感染だけでなく、病気や体調の異変などの影響が爪に表れるケースもある。
爪の表面が混濁する「爪乾癬」は、体の免疫バランスが崩れることで、爪の表面に点状のへこみができてもろくなることで起こる。
「爪はいろんな栄養素を取っていないときれいに生えてきません。爪が薄くてもろくて割れる、ボコボコ波打つような場合は栄養不足を疑います。よく知られているのは、爪が薄くなり反り返る『スプーン爪』で、鉄欠乏性貧血が原因です。ふだんの食生活のなかでビタミンやタンパク質をしっかり取るようにして、スプーン爪の場合は鉄分を補えば、また健康な爪が生えてきます」
副鼻腔炎や気管支炎などの呼吸器疾患になると、黄色爪症候群をまれに起こすことがある。爪の下のリンパ管が拡張することで爪が厚くなり黄色く見えるというが、爪水虫など、ほかのトラブルと見分けがつかないので、顕微鏡などを使いながら検査をするという。
ごくたまに爪が黒くなることがある。多くは「黒色線条」という爪の根本にできたほくろの一種だが、幅7ミリ以上、周囲の皮膚まで黒くなったら悪性黒色腫(メラノーマ)の可能性があるので、放置しないですぐに病院に行こう。
また、肝臓は体の血液を浄化したり、毒素を分解したりする大切な臓器。 肝硬変は肝臓の組織が線維化してしまい、肝機能が低下してしまう病気だが、この病気を発症すると爪に白濁が見られることが多いそうだ。