治らない口内炎は、実は口腔がんだったということも(写真:ペイレスイメージズ1/PIXTA) 画像を見る

痛くて、食事をするのもストレスになってしまう口内炎。15歳以上を対象としたスウェーデンの調査では、過去2年の一般的な口内炎の有病率は17.7%で、5人に1人という割合だった。

 

「ごく一般的で、誰でもなりうる病気なので、つい油断しがちですが、じつは“なかなか治らない口内炎だな”と思っていたら、がんだったという事例もあります。気になる場合は放置せず、医療機関に行くことが望まれます」

 

こう注意喚起するのは、東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック院長の新谷悟さんだ。確かにステージⅣの舌がんを宣告された堀ちえみ(56)も、当初、がんを口内炎と診断された。だが、「半年たっても治らず、《治らない口内炎》で検索すると舌がんの写真が出てきたので、大学病院を受診して、進行がんが発見された」と告白している。

 

ときには“がんの隠れみの”にもなる口内炎について、新谷さんに解説してもらおう。

 

「口内炎とは、広義では口の中の粘膜にできる炎症の総称です。頰の裏側、歯茎、舌、唇の裏側など、どこにでもできます」

 

■原因によって症状が異なる口内炎

 

ひと口に口内炎と言っても、4つに大別できるという。

 

「まず、もっとも一般的に見られるのが『アフタ性口内炎』です。原因は定かではありませんが、ストレスや疲労、睡眠不足などで免疫力が落ちること、また、粘膜の再生を促すビタミンB₂不足であると考えられています。

 

大きさは2~10ミリほどで、上皮が剝がれ、白くべちゃっとした潰瘍の周りが、赤い炎症で縁取られています。小さい場合は、同時に2〜3個、群がってできることもあります」

 

2つ目は「ウイルス性・細菌性口内炎」だ。

 

「ヘルペスウイルスや、カビの一種であるカンジダ菌が増殖して、口内炎ができてしまうことがあります。そのほか、梅毒、淋病、クラミジアなど、性行為感染症による口内炎も。

 

ヘルペスウイルスなどが原因の場合は、初めは水疱ができて、それが潰れてびらん(ただれ)や潰瘍になります。唇側、前の歯茎にできる場合は水疱のうちから気がつきますが、多くは水疱が破れた後に気づきます。カンジダ菌が原因の口内炎の場合は、白い付着物があり、綿棒などで拭うとくっついてきます」

 

3つ目は、物理的な刺激によってできる「カタル性口内炎」だ。

 

「食事中に舌をかんでしまったり、魚の骨が刺さってしまったり、歯のかぶせ物が合わなくて口の中で擦れてしまったりしてできた傷や、熱いものを食べてできたやけどが原因です。欠損した歯があり、そこに舌が入り込んで、何度も擦れることでできる可能性も。

 

外傷なので、赤みが強く、アフタ性口内炎と違って境界が不明瞭な場合が多い。口臭が発生したり、味覚が感じにくくなることがあります」

 

4つ目は「その他の口内炎」。原因によって、見た目や症状は異なる。

 

「たとえば何年も前に詰めた銀歯に、突然、アレルギー反応を起こしてしまう人がいます。残念ながら、アレルギー反応を治すことは困難なので、この場合は詰め物を替えるしかありません。またたばこを吸う人に起こるニコチン性口内炎は、ニコチンの刺激で口内炎ができます」

 

これらの口内炎は、歯科口腔外科、耳鼻咽喉科、内科などで診てもらえる。

 

「医療機関では炎症を抑えるステロイドの軟こうが処方されることもありますが、アフタ性口内炎などは栄養や睡眠をしっかり取ることが重要です。とくに薬を使用しなくても、10日から2週間程度で自然に治ります」

 

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