「ハクション!」と、思いっきりくしゃみをした瞬間、下着にジュワッと染み出てくる尿の“ちょいもれ”は、閉経後、約4割の女性が悩んでいるという。
「くしゃみやせき、重い荷物を持ったときなど、おなかに力が入って尿がもれることを腹圧性尿失禁といいます。最大の要因は骨盤底筋の衰えです。
骨盤底筋とは、骨盤の内側にハンモック状に張られた排泄をつかさどる筋肉です。膀胱や子宮、直腸などの臓器を支えているので、この筋肉がゆるむことで、尿道や膣、肛門を締める機能が下がり、尿もれや、ひどいときには便もれ、骨盤臓器脱などのトラブルにつながってしまうのです」
そう解説するのは、女性医療クリニックLUNAネクストステージ(神奈川県横浜市)の中村綾子院長。中村院長は、女性泌尿器科のなかでも骨盤底疾患に特化した治療を行っている。
「骨盤底筋が変化するのは妊娠・出産、また閉経を迎えて女性ホルモンが急激に減少するときです。
女性ホルモンの減少で尿道や膣の粘膜が薄くなると、膀胱が過敏に反応して収縮することから、強い尿意が突然現れます。トイレに間に合わず、尿もれをしてしまう。これを切迫性尿失禁といいます。
このほか、腹圧や冷えなど、“何げない生活習慣”が、尿もれのリスクを高めてしまっていることがあります」(中村院長、以下同)
■ぽっこりお腹対策の腹筋運動&ガードルも要注意
さらに、夏場はそのリスクが高まるのだという。たとえば、少しでも体を細く見せたいと、“ガードルでぽっこりおなかを締めつける”人も多いだろうが、これも腹圧をかけるのでNGだ。
「ガードルなどキツめの体形補正の下着を身につけることで腹部を圧迫し続ける状態に。それにより常に膀胱が腹圧で圧迫されている状態になり尿もれにつながります。骨盤底サポーターなど腹圧をかけずに骨盤底筋を支える下着が販売されているので、骨盤を保護してくれるものを選びましょう」
腹圧をかけてしまう行為は、日常生活のなかで意外と多い。
夏前にやせようと“腹筋運動をする”のもよくない。外側の腹直筋を鍛える動きは、おなかに力が入ることで膀胱などの臓器を圧迫し、下で支える骨盤底筋に負担をかけてしまう。
「腹式呼吸で、おなかに力を入れるときも、肛門と膣を締めなければ、臓器を下に押し出してしまいます。反対に腸腰筋などのインナーマッスルを鍛えれば骨盤底筋を押し上げるので、筋肉強化だけでなく尿もれ予防にも効果的です。
トイレでいきむのも御法度!
また、高齢になるとどうしても排尿の勢いが弱まるので、おなかに力を入れて用を足そうとする人も多いようですが、女性の尿道は3~4cmと短く、いきむと尿道口が開くので、繰り返しているともれやすくなるのです。“腹圧をかけておしっこを出す”“排便時にいきむ”行為も、尿もれを促してしまうのでやめましよう」
