■ペースメーカー手術で通常の生活に戻ることができる
「脈が遅いというだけで、ほかにとくに症状がない人は、経過観察となる場合がほとんどです。また薬剤性徐脈の場合は、影響を及ぼしている薬の服用を控えるなど、薬剤の調整をすることで症状が改善します。
ただ、それ以外の原因で、めまいやふらつき、倦怠感など、はっきりと自覚症状がある人の場合は、美川さんと同じように手術を受けていただくことになります」
具体的にはどんな手術になるのだろうか。
「ペースメーカーは500円玉より一回りほど大きいサイズです。左胸の鎖骨の下を数センチ切開し、ペースメーカー本体と、2本のリード線と呼ばれる細い電線を埋め込みます。リード線は静脈を通して心臓の内壁に固定します。手術は基本的には局所麻酔で、1~2時間ほどで終了します。
手術後、ペースメーカーは心臓の動きを監視し、心拍が遅いことを感知すると電気刺激を与えて、脈を正常に保ってくれるのです」
ペースメーカーの手術さえ受ければ、通常の生活に戻れるし、自動車の運転にも制限はない。美川さんのように、めまいなどの自覚症状がある場合は、早々に専門医を受診するのがおすすめのようだ。芝山医師も言う。
「心臓の病気、不整脈が出る病気のなかで、洞不全症候群というのはそこまで深刻なものではありません。きちんと専門医の治療を受ければ、日常生活を取り戻せます。
ただ、同じような症状の怖い病気はほかにも。洞不全症候群の動悸かと思ったら、さらにたちの悪い不整脈が隠れていたというケースもありますから」
洞不全症候群を“とば口”として、自分の心臓にもう少し目を向けてみてもいいのかもしれない。
