「おせちやお雑煮、大晦日に食べるものは、地域で違いが出やすいんです。たとえば、東日本の年越しそばは、つけ汁のざる、もしくはもりそば。西日本は温かいかけそばです。北海道や宮崎県、岐阜では、大晦日からおせちを食べ始めるという家庭もあります」
そう話すのは、47都道府県の県民性研究の第一発見者である矢野新一さん。今回、矢野さんに全国のユニークな年末年始の過ごし方を紹介してもらった。
■大晦日には……
三重県の津市では、暮れになるとうなぎ店が繁盛する。津市の市役所が、年末の仕事納めの日にうなぎを食べるようにしたところ、一般の会社にも広まっていったのだとか。
「津市周辺は、人口比でいうと日本一うなぎ店が多い地域。人口1人当たりのうなぎの消費量も日本一です。これは江戸時代に当地を治めていた藤堂藩が、藩士の体力気力の増強を目的にうなぎを食べさせたことに端を発しています。当時、殿様がうなぎ店を城下に集めたのだとか」
また、新潟でも大晦日にすしなどのごちそうを豪勢に食べる習慣が。上・中越地方では、お正月ではなく大晦日に子どもにお年玉をあげてしまうというから、驚きだ。
■おせちといえば……
おせちのメニューといえば、数の子、黒豆、昆布巻き、栗きんとんなど。しかし、地域によってはご当地メニューを加えたアレンジバージョンが定番に。福井県と栃木県日光市では、なんとおせちに水ようかんを食べるという。
「夏に食べるはずの水ようかんをなぜ?と思うかもしれませんが、そもそも水ようかんはおせち料理用の菓子として冬に作られていたもの。冬の寒さを利用して冷やし固めていたんです。かつてはおせち料理として全国的に食べされていましたが、今では一部の地域にその習慣が残るのみとなりました」
ご当地ならではのメニューを入れるのは、捕鯨文化のある長崎県の鯨、山口県のフグ。福(ふく)を祈って食べることから、フグは縁起のいい食材とされているそう。
■お雑煮&お餅といえば……
日本でここだけ!というお雑煮が、岩手県沿岸地方で食べられるくるみ雑煮。
「くるみ雑煮は、お雑煮椀の隣りに添えたくるみだれに、お椀から引き上げたお餅をつけて食べるのが特徴です。くるみだれは、砂糖やお雑煮のだしで味つけされています」
千葉県では、お雑煮の上に「はばのり」と呼ばれるのりを散らして食べる習慣がある。これは、通常ののりよりも何倍も磯の香りが強い高級のり。「幅を利かす」に通じることから縁起物として食べられており、千葉県民によると、「お雑煮にはばのりがないとお正月が来た気がしない!」という。12月の寒い時期にしか採れず、生産数も少ないが、正月になくてはならない一品のようだ。
■年末年始に実家に宿泊するときに……
福岡県の春日市、筑紫野市の一部地域では、年末年始に実家や親戚の家に宿泊するとき、3泊してはいけないという変わった習慣が残る。
「2泊、4泊は大丈夫なので、3泊にならないよう調整するか、どうしても3泊しかできない場合は3泊目だけホテルなどに宿泊するそうです。理由はわかりませんが、一般的に日本では、奇数の3は縁起のいい数とされているので、こういう習慣は珍しいですね」
毎年、無意識に続けている年末年始の習慣。元をたどってみれば、意外な理由が隠されているかも!?