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「私の子どもがかぜをひいたときには、同じく小児科医をしている夫が薬を処方します。しかし、私はその薬の9割は飲ませません。子どもにはあまり薬を使いたくないからです。この本には、そんな小児科医であり母としての本当の気持ちを綴っています」

 

そう語るのは、とりうみ小児科の鳥海佳代子院長。小学生の男の子と女の子の双子のママでもある鳥海先生は『小児科医は自分の子どもに薬を飲ませない』(マキノ出版)を出版した。小児科医の“偽らざる気持ち”は、子育てに悩むママにとって参考になることが多い。そんな鳥海先生に、小児科や薬との賢い付き合い方を教えてもらった。

 

【1】かぜは薬で治りません

 

「一般的なかぜは80〜90%がウイルスによって引き起こされます。そのウイルスは100種類以上ありますが、これらをやっつける薬はないのです。まして、細菌を退治するための抗生剤を飲んでも、ほとんど意味がありません」(鳥海先生・以下同)

 

【2】3歳までに多くの病原体との出合いを

 

「多くの子どもは4歳になると、小児科を受診する回数がガクッと減ります。これは3歳までにさまざまな病原体と出合い、闘うことで免疫がつき、一般的な感染症にかかりにくくなるからです。3歳までは、病原体と出合って熱が出ることも少なくありません。でも、病原体に打ち勝ち、回復することで、免疫という“貯金”ができるわけです」

 

【3】薬を出しすぎる医者にだまされない

 

「薬の処方は医師によって異なります。下痢をしている子どもに、抗生剤、整腸剤、せきの薬、痰を出しやすくなる薬、気管支拡張剤……とドッサリ薬を出す、ひどいクリニックもあります。たくさんの薬を処方されたときに『いっぱいもらえてよかった』ではなく『大丈夫かな?』と思うことが大事」

 

【4】予防接種を受けるかどうか、決めるのは親

 

「予防接種は受けるメリットだけでなく、感染症にかかったときの症状、合併症や重症化したときの後遺症や死亡する確率などのデメリットも医師から説明を受けてください。そして、最終的に予防接種を受けるかどうかを決めるのは、あくまで親御さんです」

 

【5】インフルエンザワクチンは「効けばラッキー」

 

「私のクリニックでもインフルエンザの予防接種をしていますが、あまりやりたくありません。それは、インフルエンザワクチンの有効率が、お母さんが期待するほど高くはなく、その説明に時間がかかるから。ワクチンを打てば100%効果があると思っているお母さんたちに『効いたらラッキーだと思ってください』と言うと驚かれます。インフルエンザワクチンを受けていれば安心、ということはないのです」

 

【6】子どもの医療費無料にはワナがあります

 

「子どもの医療費無料化を実施する自治体が全国に広がっていることは、たしかに誰もが経済的な負担なく医療機関を受診できるので、とてもいい制度だと思います。しかし、あまりに気軽に受診できるようになると、子どもに不必要な薬が与えられる機会も増えるので、注意が必要です」

 

【7】病院いらずの子どもに育てましょう

 

「小児科医療では、大人相手の診察に比べて、面倒なことが山のようにあり、そもそも採算など考えられません。それでも、子どものことを本当に考えて、不必要な薬を処方せず、患者さんへ説明する時間を作る小児科医は、全国にたくさんいます。その一方で、利益を優先して、短い診察時間だけで過剰に薬を出す医師がいることも事実です。その背景には、気軽に病院に行き、薬さえもらえばいいと考えるお母さんたちが少なくないということもあります。薬に頼らずに、病院いらずの子どもを育てることは、子どもたちを守るだけでなく、日本の小児科医の質を高めていくことにもなるのです」

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