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「日本ではここ10年ほどでようやく認知された、自閉スペクトラム症(ASD)やADHD(注意欠如多動症)などの発達障害ですが、発達障害がある人はそれ以前からいたと思われます。昔は近所の友達や大人と接することが多く、そこは傷つきながらも順応するための“道場”だったのですが、いまはパソコンやゲームでひとりで遊んだり、お母さんとの“密室”にこもってしまったりする子どもが多い。だから発達障害が顕著な子が目立つようになったともいえるんです」

 

そう話すのは、小児発達学博士で大阪大学大学院特任講師の和久田学先生。いつもひとりでポツンとしていたり、イザコザばかりを起こしていたり――「まわりの子どもたちと上手になじめていないような」と不安な人も多いのでは? そんな発達障害、「こだわりが集中する自閉スペクトラム症」「抑制が利かないADHD」の特性と、それを個性として伸ばす方法を和久田先生が解説してくれた。

 

■いつもと決まった散歩コースでないと嫌がる(自閉スペクトラム症)

 

「こだわりのあることやものの、変更の難しさは自閉スペクトラム症の大きな特性。とくに“急な”変更は難しいので、変更せざるを得ないときは、まず予告をして、不安を取り除くことが大切です」

 

■まわりから「◯◯博士」と呼ばれるほど、特定のことについての知識がある(自閉スペクトラム症)

 

「ピンポイントにこだわりや興味が集中し、そこから離れにくいという特性があります。周りに迷惑がかかる場合はよくありませんが、問題なければその子の得意なこととして生かしていくのがよいでしょう。この特性を伸ばすことで、将来、専門家や学者になれるかもしれません」

 

■話しかけても目をそらせる(自閉スペクトラム症)

 

「コミュニケーションや社会性の困難さの表れです。子どもの視線の先に大人が入って笑いかけるなど、コミュニケーションの楽しさを味わうことが大事。『この人と一緒にいると楽しいことが起こる』という経験を積んで、人に対する関心を育てましょう」

 

■順番が待てない(ADHD)

 

「“衝動性”から生じる特性です。ルールの理解が十分でない場合もあります。順番を楽しく待てるように、絵本やパスルなどを準備するのがおすすめです」

 

■落ち着きがなくじっとしていられない(ADHD)

 

「動かずにはいられない状況になるのもADHDの特性。本人もやめられない場合が多いので、無理にやめさせるよりも、積極的に体を動かす機会を与えていくことがいいでしょう。じっとしていなければならない場面では、何か手に持って遊べるものを用意しておくといいでしょう」

 

■何かに駆り立てられるように動き続ける(ADHD)

 

「本人もやめられず、実は大変に思っているのかもしれません。このことで危険な状況になるとき――たとえばどこかに行ってしまって行方不明になりそうになる、交通事故に遭いそうになる――といった場合は、専門医にすぐにかかることが必要。もちろん行動的、活動的であることは、生命力や意欲にあふれ、アイデアに満ちているという証しでもあります。それを本人のいいところとして認めていくことも大事です」

 

最後に和久田先生は、発達障害についてこう語る。

 

「もし、『うちの子は発達障害かも』と思っても、『なんでそんな当たり前のことができないの!?』と無理に叱ったりしないでください。それはお子さんにも大きなストレスになってしまいます。発達障害は“ひとつの個性”として考えられます。研究が進んでいて対処法もあるので、過剰に心配することはありません」

 

※本文では「自閉スペクトラム症」という表記を用いていますが、「自閉症スペクトラム」という表記の仕方もあり、意味は同じです。

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