「日本では、ほとんどの賞味期限が実際の期限より2割以上短く設定されています。そのため、まだ十分食べられるにもかかわらず、たくさんの食品が捨てられているんです。食品ロス問題に積極的に取り組む京都市の試算によると、1世帯4人の家庭の場合、年間6万円相当の食品が廃棄されているそうです」
そう語るのは、栄養学の博士で食品ロス問題の専門家でもある井出留美さん。そもそも「賞味期限」、そして「消費期限」の定義とは?
「賞味期限とは、おいしく食べられる期限のこと。この期限をすぎたからといって、急に品質が下がって食べられなくなるわけではありません。これに対し、日持ちのしないお弁当やお総菜などに表示されている『消費期限』は、食べても安全な期限を意味します。表示の日にちを過ぎると急激に品質が悪くなるので、必ず期限内に食べましょう」
企業は安全のため、通常の保存状態で日持ちする日数に「安全係数」という数字を掛けて算出した賞味期限を表示している。その値の設定は企業の判断に任せているが、消費者庁が推奨する目安は0.8以上1未満だ。安全係数が0.8の場合、井出さんが冒頭で触れたように、賞味期限は2割ほど早まる計算になる。たとえば、18カ月日持ちするものでも、14カ月に設定され、賞味期限は4カ月も前倒しになるのだ。
「安全係数はあくまで目安。それを基に決められた賞味期限も1つの目安であり、絶対的な期限ではありません。表示されている保管方法を守れば、賞味期限を過ぎた食品でも、おいしく食べられる場合があります」
そこで井出さんに、どの家庭にもある食品の“リアル賞味期限”を教えてもらった。
【卵】表示してある賞味期限+約1カ月半(冬季)
「日本では、卵の賞味期限は夏場に生で食べることを前提に、1年を通して排卵日から2週間と設定されています。しかし本当は、冬場なら気温10度以下で保存すれば、排卵から57日間は生で食べられます。夏なら排卵から16日、春と秋は25日までOKです。ただし、これは冷蔵販売されている卵の場合」
【納豆】表示してある賞味期限+2~3日
「ある発酵食品メーカーの社員の話では、賞味期限の切れたころが熟成して、いちばんおいしくなるそうです。安全係数で短くなっていることを考えれば、賞味期限後、2~3日はおいしく食べられるといえます」
【レトルトカレー】表示してある賞味期限+約3カ月
「カレーやパスタソースなどのレトルト食品の賞味期限は、製造日から1?3年。もっとも短い1年のものだとしても、賞味期限が切れてから約3カ月は持ちます」
【缶詰】表示してある賞味期限+約9カ月
「塩分が高く味の濃いものや、砂糖のシロップ漬けのものなどは、賞味期限を12年過ぎても食べられるという実験結果もあります」
【はちみつ】表示してある賞味期限+約6カ月
「はちみつは糖度が高くて水分が少ない、腐りにくい食品です。賞味期限を過ぎても、常温保存で6カ月は食べられます。ただ、農家で直接販売されているような密封処理がされていないものは、開封前に品質劣化することも」
【梅干し】表示してある賞味期限+約2年
「塩分の高い梅干しも日持ちする食品。塩だけで漬けられた『白干し梅干し』は、表示の賞味期限が切れても約2年は食べられます。ただし、減塩されているものはそこまで日持ちしないので、賞味期限を守って食べましょう」
【茶葉】表示してある賞味期限+約1年半~2年半
「市販の茶葉の賞味期限は製造日から約6カ月ですが、茶葉販売店の人から『本来2~3年は飲める』と聞きました」
食品を無駄にしなければ、同時に家計の負担も減る。昔のように五感を使い、食品も家計も無駄を減らそう!